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プロ球界で“軟式出身選手”が活躍中…全軟連は「勝利至上主義」「競技人口減」をどう考える?〈古希VS小学生の試合も!?〉
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKYODO
posted2021/10/30 17:03
東京五輪の日本代表にも選ばれたカープ・森下暢仁、栗林良吏も“中学軟式”出身だ
傾向として強豪チームは全軟連の全国大会に集中するので、全中は公立中学校には大きなチャンスとなっているのだ。
さらに、両大会に同じチームが出場できないことで、選手の疲労軽減や複数チームの全国大会出場のチャンス拡大などの副産物も生まれている。
事実、2016年は石川県の異なる中学が全軟連と全中を制覇した。
その時の全中を制したのが、奥川恭伸のいた宇ノ気中学だった。こうした大会の方式も軟式野球のレベル向上につながっている。
競技者数の“正確な把握”が急務
また、小林専務理事は今後の課題として、アマチュア野球界全体で取り組んでいることがあると語る。
「サッカーやバスケなど他のスポーツ団体では当たり前にやっている『競技者登録システム』を設置する方向で進めています。正確な競技者数を把握した上で、どういった普及・振興ができるのか。野球界全体が一体となってやる必要がある。JABA(日本野球連盟。主に社会人野球を統括)の方はすでに進めていて、大学や高校年代でも始めました」
これまで競技人口の明確な数字を把握していなかったことには驚きだ。言い換えれば、これまで「野球人口の減少」は、正確な数字を把握しないまま語られていたというわけだから、変革への動きが鈍くなって当然と言える。
一方、未来に視点を向ければ、全軟連がこうした取り組みを始めることで、変革の余地は残されているという見方もできる。もっと言えば、先述したポニーリーグなどの硬式野球団体と全軟連が切磋琢磨することが望ましい。
「軟式・硬式を区別して考える必要はないと考えています。硬式で指導をされている監督やコーチとも、なんらかの形で協力し合えるはず。我々がこんなことをやりたいと考えた時、硬式団体に相談するような機会を設けていきたいと考えています」
団体の垣根を越えた先に……
中学では軟式が良いのか、硬式が良いのか、是か非かで議論しているうちはどちらも大していい取り組みをしているとは言えないだろう。
互いが意識して高め合い、子どもたちにとってどのような環境がベストかに力点を置きながら、双方が成長していくことが肝要だ。
ドラフトによってもたらされた、そしてこれからもたらされる結果を、育成年代の指導のあり方を見直すきっかけにしてもらいたいものだ。