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「五輪選考会の標準記録も可能」NFL屈指の俊足選手が100m走に挑戦 “ボルトより速い〇〇選手”論に終止符?
posted2021/05/13 11:01
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
Getty Images
過去にこんな見出しを見たことはないだろうか。
「高校球児、50m走で5秒7」(※50mの日本記録は朝原宣治氏がもつ5秒75)
「ムバッペ、最高時速でボルト超え」
日本だけではなく、世界中で、サッカー、アメフト、野球選手のスピードがこんな風に紹介されることがある。俊足ぶりを表現したいのは分かるが、数字、記録を争う世界にいる陸上選手や関係者にとっては、見過ごせない内容だ。
ボルトよりも速い選手が他スポーツにいる?
50m走のタイムは手動で、選手自身のタイミングでスタートしていることが多いし、サッカー選手のプレー時の最高時速を単純に100mに換算されても、あくまでも仮説なのでボルトを超えたことにはならない。俊足の選手は、確かにその競技では突出したスピードを持っていることはまちがいない。だがボルトよりも速い、50mで日本記録を超えるなどの表現は、陸上選手に対して敬意がないように感じる。
もちろん当該選手には非がなく、キャッチーな見出しをつけたり、正確性に欠ける数字をそのまま伝えているメディアに問題があるのだが、多くのスポーツファンはこう思っていたのではないだろうか。
「一緒に走ってくれたら、どちらが速いか分かるのに」と。
5月9日。待望の瞬間が訪れた。アメフト選手vs陸上選手が100mで実現したのだ。
きっかけは米国陸連のツイート「ぜひ参加ください」
今回、100mに挑戦したのは、NFLシアトル・シーホークス、ワイドレシーバーのDK・メトカーフ。
アメフトファンにはおなじみの選手だが、193cm、108kgの大きな体躯ながらNFL屈指の俊足選手で、昨年10月のアリゾナ・カージナルス戦で、相手選手がインターセプトから100ヤード近くを独走。ほかの選手が追走を諦める中、メトカーフは猛然と追走し、タッチダウン直前でタックルして阻止。時速36.44kmで駆け抜ける姿が全米を熱狂させた。