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プロ球界で“軟式出身選手”が活躍中…全軟連は「勝利至上主義」「競技人口減」をどう考える?〈古希VS小学生の試合も!?〉
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKYODO
posted2021/10/30 17:03
東京五輪の日本代表にも選ばれたカープ・森下暢仁、栗林良吏も“中学軟式”出身だ
軟式野球にも“勝利至上主義”の問題
とはいえ、小学生の高学年から中学生年代となると、軟式野球といえ、やはり「生涯スポーツ」とは言い難い。勝利を目指す「チャンピオンシップ」型のチームがほとんどで、野球界の「問題」も例外なく当てはまる。
その問題とは、“勝利至上主義”が横行し、長時間練習や怒号・罵声の飛び交う練習環境、あるいは、特定の投手による登板過多など、野球人口減少の一因とも言われてきたものだ。
もっとも、小林専務理事は、そこへの取り組みについては変化してきていると言う。
「指導者に対する、『子どもたちのためにどうあるべきか』という視点ですよね。今までは試合は勝たなきゃダメなんだという風潮がありましたが、最近はそれではダメですよ。子供へのハラスメント的なことを排除する必要がある。子どもたちにいかに楽しんでもらえるような指導ができるのか。講習会を開催し、そこで“指導者資格”を付与するなどの取り組みを通して、理解してもらえるよう努めています」
これまで指導者の資格制度はサッカーなどが先進的に取り組んできた。野球界は遅れており、実際、筆者も2013年に関西のリトルリーグ連盟で講演をした際に、「資格制度は作るべきか」という質問を受けた。時代の流れとして、指導者資格制度の必要性が高まってきたといえるだろう。
しかし、ここで重要なのは、資格制度の設置そのものではなく、指導者の意識を変えることに他ならない。指導者は常に勉強していくことが必須であり、それを怠るものは指導する権利を有すべきではない――あくまで“手段”としての指導者資格なのだ。
小林専務理事は言う。
「2024年から正式採用になるのですが、全軟連の『学童の部』に登録していただくチームは、監督かコーチいずれかの一人以上が指導者資格を取得していることが必須条件になります」
球数制限についても、年々、改定の方向に進んでいる。
とはいえ、全軟連が先進的に取り組んでいるとは言えない。むしろ、硬式野球団体の方が取りかかりが早く、全軟連は世間的な流れを受けて後追いした感は否めない。