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「実は緊張していた」ロナウドが復帰戦で2得点の離れ業、“赤い悪魔”を復権へと導けるか<“1995年のフリット”なみの存在感> 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2021/09/19 17:02

「実は緊張していた」ロナウドが復帰戦で2得点の離れ業、“赤い悪魔”を復権へと導けるか<“1995年のフリット”なみの存在感><Number Web> photograph by Getty Images

12年ぶりにユナイテッドに復帰したC・ロナウド。いきなり2ゴールと圧巻の活躍を見せた

レプリカシャツは販売初日に1日の売上げ記録を更新

 プレミア史上最大級のスターは、リーグの規定も曲げられた。登録選手の背番号は最低1シーズン変更不可のはずが、ユナイテッドの7番はエディンソン・カバーニの背中からロナウドの背中へと移された。

「RONALDO 7」のレプリカシャツは、販売初日にして1日の売上げ記録を更新。早くから埋まり始めたオールド・トラッフォードには、滅多に足を運ばないアメリカ人オーナー一族の1人もいたのだが、テレビ観戦で反グレイザー・チャントが聞き取れたのは1度だけ。ロナウド移籍が生み出した高揚感が、7万人収容のスタジアムを包み込んでいた。

 ロナウドがチームに与えるインパクトは、フリットのそれに勝るとも劣らない。選手がトップ中のトップたりえる背景には、生まれ持った才能の他にも理由がある。フリットのチェルシー入りの際は、古巣のミランで右膝にメスを入れた32歳が「最後のひと稼ぎ」にやって来たとする否定的な見方もあった。

 だが、「最後の一花」を意識していた当人は自主トレでコンディション調整に専念し、プレシーズンにも臨んでいた。ロナウドは、さらに4歳上でのユナイテッド再加入だが、入念な手入れも人一倍。プロ意識の高さは若手だけでなく、疑いの余地のない才能を持ちながら専心のほどが疑問視されるポール・ポグバも見習うべきものがある。

 フリットはピッチ上でもチームを変えるほどの影響力を見せた。フリット加入当時のチェルシーは指揮を執っていたグレン・ホドルがパスサッカーを志向しても、ボールをキープできないチームだった。スイーパー起用が長続きしなかったのは、起点となるフリットから後方でパスを受けたがらなかった周囲の足元不安。ほどなくして1列前で先発するようになると、自ら持ち上がれるフリットのキープとチャンスメイクを確信したせいか、中盤や後方から攻撃に参加する頭数が増えていった。

約1.3試合に1点の割合でゴールを重ねてきた

 ユナイテッド2期目のロナウドは、長く勝ち切れなかったチームの勝率を上げられる新センターフォワードだ。昨季、ユナイテッドのプレミアでの引き分けはトップ10内で最多の11試合。勝点2ポイントを落としたと言える試合の中には、最終的に降格したフルアムとウェストブロムウィッチとの対戦も含まれる。

 そのチームの攻撃を最前線でリードするロナウドは、オーレ・グンナー・スールシャール監督が採用する機会の多い4-2-3-1のターゲットマンという単純な意味ではなく、確実にネットを揺らすストライカーとしてチームメイトたちにパス供給を意識させる。

 キャリアを通じ、約1.3試合に1点の割合でゴールを重ねてきた計算になるロナウドの決定力は、若いメイソン・グリーンウッドやマーカス・ラッシュフォード、アントニー・マルシャルやカバーニをも凌ぐ。その秘訣は、年齢を重ねても衰えないゴールへの嗅覚とともに、チャンス到来の可能性に鼻を向ける意識にある。

 こぼれ球を押し込んだニューカッスル戦での1点目にしても、グリーンウッドがミドルを放つ時点では相手DF陣も味方3人も足が止まっていた。唯一ロナウドだけがこぼれ球に反応できる位置へ動き出していた。表面的には単なるタップインだが、元ストライカーの指揮官が「グレート・ゴール」と評するのも頷けるゴールだ。

【次ページ】 ロナウドの帰還が実現も、不安は中盤中央

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