プレミアリーグの時間BACK NUMBER
「実は緊張していた」ロナウドが復帰戦で2得点の離れ業、“赤い悪魔”を復権へと導けるか<“1995年のフリット”なみの存在感>
posted2021/09/19 17:02
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
「ビバ、ロナウドォ~!」
マンチェスター・ユナイテッドのファンは、キックオフ前から歌っていた。帰ってきたクリスティアーノ・ロナウドは、再デビュー戦でも「ビバ(万歳)」と讃えられるのに相応しい英雄だった。
9月11日のプレミアリーグ第4節ニューカッスル戦(4-1で勝利)は地元サポーターに止まらず、サッカー好きなイングランド庶民、もっと言えば世界中のプレミア・ファンが注目していたホームゲームだ。
その移籍初戦から先制と勝ち越しの2ゴールを決めたのだから、「期待通り」の一言では片付けられない名演と言っていい。さすがは、20代前半だった当時から「夢の劇場」ことオールド・トラッフォードでワールドクラスの評価を勝ち取った超一流。やはり、役者が違う。
同日に英国人エマ・ラドゥカヌがテニスの全米オープンで初優勝を成し遂げていなければ、6年間の前回在籍時に合計118得点で国内外での9冠に貢献し、今回ユナイテッドに復帰した千両役者の写真が、翌朝の国内各紙第1面を飾っていたことは想像に難くない。
30代後半としては超人的な肉体と意欲
ニューカッスル戦は、ラファエル・バランのホーム・デビュー戦でもあった。しかし、話題の主はレアル・マドリーから移籍金3400万ポンド(約51億円)で獲得された28歳のCBではなく、ユベントスから1280万ポンド(約19.2億円)で呼び戻された36歳だった。
内容は最終スコアほど優勢ではなかった一戦で、ユナイテッドが放った枠内シュートは7本。最高作品はブルーノ・フェルナンデスが決めたチーム3点目のミドルになるだろう。しかし、試合のハイライトは同じポルトガル人でクラブと代表で先輩格のロナウドによる、シュート自体は平凡な2ゴールだった。
前半ロスタイムの1点目は、同時進行だったプレミア6試合で均衡を破る得点としてもメディアに歓迎された。後半の2点目は、56分に追いつかれた後の嫌なムードを数分間で一掃し、ホームの観衆に満面の笑みを取り戻させた。
フル出場を果たしてピッチを後にする際のウィンクは、代表戦でのウェイン・ルーニーの退場絡みで非難された2006年W杯当時とは違い、国内テレビ観戦者の目にもチャーミングと映った。