熱狂したファンのなかには、『ファンタジー・フットボール』の“プレーヤー”たちもいたはずだ。第4節前にロナウドをキャプテンとして迎えていた参戦者は、ユナイテッド公式の『MUTV』でインタビューした元チームメイト、ウェズ・ブラウンだけではなかった。筆者の友人には、逆に後悔することになったニューカッスル・ファンもいる。

　ロナウドをチームに入れなかった最大の理由は“高齢”。だが、前半早々に切り返しとステップオーバーでボックス内に侵入した鋭さといい、後半の得点シーンでスルーパスに走り込んだ時速32.3kmの速さといい、彼の肉体と意欲は30代後半としては超人的だ。「実はすごく緊張していた」という試合後のコメントは「普通の人」を感じさせたものの、「1点は決められるかなと思っていたけどね」と続けるあたりは、やはり常人とは違っていた。

シュート自体は平凡だったが、身体のキレやスピードはとても36歳とは思えないものだった©Getty Images

フリットのチェルシー入りはイングランド中を沸かせた

　いわゆるベテランの移籍に、これほどの注目と期待が寄せられたのはいつ以来だろう。個人的には、1995年のルート・フリット以来だ。バロンドール（世界年間最優秀選手賞）受賞歴も持つ大物のチェルシー入りは、クラブの垣根を超えてイングランド中を驚かせ、そして沸かせた。

　当時のプレミアリーグにはエリック・カントナがおり、同年デニス・ベルカンプとダビド・ジノラもやって来たが、フリットはキャリア終盤でも別格のスーパースターだった。

　SNSなど存在しなかった当時、バイエルン入りも噂された超大物が、ネクタイを締めたシャツの上に青いユニフォームを着た写真を新聞で目にしたときは、チェルシーファンの1人として、まさかの夢が現実になった喜びを味わった。

　フリットのプレミアデビューはホームでのエバートン戦だった。背中に「GULLIT 4」とあるユニフォームを着たファンが続々とスタンフォード・ブリッジに向かい、普段はギリギリまで正面のパブやスタジアム内でビールを飲んでいる人々が、キックオフ30分前からスタンドで新MFの一挙手一投足を見守っていた。

　ウォームアップの段階から、精度の高いボールタッチやキックに歓声があがり、スコアレスドローに終わった試合にあって、1本のパスで得点機を創出する能力は各紙のマッチレポートで認められた。

　あれから26年、バロンドール受賞歴も5回を数えるロナウドが、12年ぶりに背番号7の赤いユニフォーム姿で現れたオールド・トラッフォードにも同様の光景があった。

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