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30年ぶりのフランス杯を逃したASモナコ…名将ベンゲルのもと全盛期マルセイユに勝利した“栄光の1991年”を振り返る《王宮で歓迎会も》
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フランス・フットボール誌France Football
photograph byL’Équipe
posted2021/09/01 11:00
トロフィーを手に喜ぶラモン・ディアス(左)とユーリ・ジョルカエフ(右)。1991年6月8日、モナコはマルセイユを破って6年ぶりのフランス杯を獲得した
30年前の勝利は、2年前にマルセイユに敗れた悪夢を払拭するものだった。同様に今回も、2010年の決勝で延長の末にPSGに0対1で敗れたトラウマから、解放される機会になるのだろうか。
「勝利は僕らと人々との距離を縮めた」とパッシは振り返る。
負けたら何にもならない
「誰もが誇りを感じていた。フランク・ソゼーにこう言われたのをよく覚えている。『決勝に進んでも、負けたら何にもならない』と。彼の言いたいことは、後によくわかった。だからこそ今回も絶対に勝って欲しい」
パッシの思いは、モナコのすべての人々の思いでもある。
(追記)
スイスとオーストリアで共催された2008年EUROを取材した際に驚いたことがある。ウィーンの街を散策していると、書店のウィンドウに1978年W杯でオーストリアが西ドイツを破った試合の書籍が飾られていた。幾つもの書店で同じ光景が見られた。
時間が止まる、とはこのことだろうと思った。78年以降もオーストリアは、幾度かW杯本大会に出場しているが、時間は78年で止まっている。1950年代まではヨーロッパのトップチームだったオーストリアが、最後に世界を驚かせたのが78年W杯だったのだから。同じように日本が、98年W杯初出場を果たすまで、68年メキシコ五輪銅メダルで時間が止まっていたように。
モナコも同じなのだろうと思う。2004年のCL決勝でディディエ・デシャン率いるモナコがジョゼ・モウリーニョのFCポルトに勝っていれば、状況もメンタリティも変わっていたかも知れないが、ポルトに敗れたモナコは状況を更新できなかった。今年5月19日の敗戦も同じで、2010年に続いてPSGに敗れ、トラウマはさらに積み重なった。
だが、それでもいつかすべてを払拭できる日が来ると思うことで、明日を生きることができる。その日が一日も早く来ることを願わずにはいられない。