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30年ぶりのフランス杯を逃したASモナコ…名将ベンゲルのもと全盛期マルセイユに勝利した“栄光の1991年”を振り返る《王宮で歓迎会も》
 

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posted2021/09/01 11:00

30年ぶりのフランス杯を逃したASモナコ…名将ベンゲルのもと全盛期マルセイユに勝利した“栄光の1991年”を振り返る《王宮で歓迎会も》<Number Web> photograph by L’Équipe

トロフィーを手に喜ぶラモン・ディアス(左)とユーリ・ジョルカエフ(右)。1991年6月8日、モナコはマルセイユを破って6年ぶりのフランス杯を獲得した

 ただマルセイユとは異なり、モナコはサッカーの街ではない。セレブが集うモナコでは、サッカーに熱中するのは低俗という印象すら与える。

 そうした状況のなかでの、フランス杯決勝である。ベンゲルが指揮するモナコには、ジャンリュック・エトリはじめクロード・ピュエル、エマニュエル・プティ、リュック・ソノール、マルセル・ディブ、フランク・ソゼー、ユーリ・ジョルカエフ、ジェラール・パッシ(後にベンゲルに呼ばれ名古屋グランパスに移籍)らのフランス代表選手をはじめ、ユスフ・フォファナ(コートジボワール)やジョージ・ウェア(リベリア、1995年バロンドール受賞)、ラモン・ディアス(アルゼンチン、後に横浜マリノスに移籍)らがいた。

 他方、OMも、辞任したベッケンバウアーの跡を継いだ名将レイモン・ゲタルス(ベルギー)に率いられ、カルロス・モゼール(ブラジル代表。後に鹿島アントラーズに移籍)やアベディ・ペレ(ガーナ代表)、ドラガン・ストイコビッチ(旧ユーゴスラビア代表。後に名古屋グランパスに移籍)、クリス・ワドル(イングランド代表)らの外国人選手と、ジャンピエール・パパン(5年連続リーグ得点王。1991年バロンドール受賞)やバジール・ボリ(後に浦和レッドダイヤモンズに移籍)をはじめとするオールフランス代表で固めたスターチームだった。

 結果は終了直前のパッシのゴールでモナコが勝利を収め、2年前の決勝でOMに敗れたリベンジを果たした。勝利とそれに至るまでの過程が、ASモナコというクラブにどんな影響を与えたかを、ボザール記者のレポートは伝えている。

(田村修一)

モナコの輝かしい瞬間

 額縁に収められた古いレキップ紙がオフィスの壁に飾られている。紙面の上でマルセル・ディブとフランク・ソゼー、ユスフ・フォファナが両手を高く掲げ、歓喜の表情を浮かべている姿が大写しになっている。長い年月を重ねながらも、色あせない写真の数々……。マルセル・ディブは、それから30年がたった今もときどきこの額縁の前にたたずみ、写真をしみじみと眺める。顔には深い皺が刻まれるようになったが、浮かべる微笑は当時も今も変わらない。

「このレキップ紙を見るのが好きなんだ。僕のキャリアのなかで、最も輝かしい瞬間だったから」

 1991年のフランス杯決勝。モナコはジェラール・パッシのゴールでオリンピック・マルセイユを1対0と下し、5度目の優勝を果たした。その2年前には決勝でマルセイユに3対4と屈し、優勝を逃していた。その試合でもフル出場を果たしたディブは、敗北のトラウマに長く囚われた。

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