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大坂なおみを「いじめるな」 アメリカで人種やメンタル・ヘルスの問題は今…インディアンスは名称変更するがトマホーク・チョップは?
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2021/09/01 06:01
(左)亡くなった7人の名前を記したマスクを着用した大坂なおみ、(右)ブレーブスの応援として行われる「トマホーク・チョップ」
「インディアンス」の名称変更をどう考えるか
どう考えるかはもちろん、それぞれの自由だ。
自分の周りには、アスリートのメンタル・ヘルスについて「昔はそんなことで弱音を吐く選手はいなかった」などと言う人もいるし、前出のように大坂選手がBLMに関連した行動を取った時には、「なんで彼女は日本人のくせにアメリカの問題に口を挟もうとするんだ?」などと見当違いのことを言う人もいた。
メンタル・ヘルスにしろ、BLMにしろ、そういう人たちは今、そこにある「間違った普通」に疑問を持たないものだ。たとえばクリーブランドのMLBチームの名称が、「インディアンス」から「ガーディアンズ」に変更されることを理解できない人たちがいる。「その名称が長い間、アメリカ先住民の人たちから糾弾されていたからですよ」と説明したところで、「勇猛なアメリカ先住民をリスペクトしての名称だけどね」とお決まりの言い訳をするのみである。
そういう人が決して少なくないのは、アトランタ・ブレーブスが2019年のプレーオフでアメリカ先住民を祖とする相手チームの選手から「リスペクトがない」と指摘され、一度は過ちを認めて止めた「トマホーク・チョップ(アメリカ先住民を想起させる赤い斧を振り下ろす動作)」と呼ばれる名物の応援をやり続けていることからも、よく分かる。
クリーブランドは自ら襟を正し、アトランタでは相変わらず、「間違った普通」を続けているわけだ。それは前大統領の就任以来、「分断の時代になった」と言われて久しい米国を反映しているようだが、だからこそ、アスリートが「自分の声」を発信することに、今まで以上の意義を見出したのかも知れない。
彼らは他の誰にも頼らず、自らのプラットフォームを使って、人々がそのことについて話し合う「きっかけ」を作るため、こう問いかけている。
「あなたに届いたメッセージはなんですか?」と――。