Jをめぐる冒険BACK NUMBER
修羅場でさらに強めた“U-24日本代表の結束”「晃生のアシストあってこそ」「DF陣に申し訳ない」「点を取って助けてもらったので」
posted2021/08/01 17:03
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Kaoru Watanabe/JMPA
一般的にはロッカールームからバスに乗り込むまでの間にあるミックスゾーンが、今大会ではピッチからロッカールームに引き上げる途中に設けられている。
だから、通常よりも試合直後の選手の感情に触れることができる。もちろん、選手もスイッチを切り替えてミックスゾーンに入ってくるが、それでも高揚感や充実感、そして疲労の色までくっきりと見える。
少し遅れてミックスゾーンに現れたキャプテンの吉田麻也が流れる汗をぬぐいながら、記者たちに語りかける。
「僕のバックパスが短くなったりしたとき、『おいおい、疲れてんじゃねえか?』って思いましたよね? (その心の声)聞こえました。なめんじゃねえよ、と思いました(笑)」
そんな冗談が飛び出すのも、激闘を制したからこそ、だ。
決勝T初戦のPK戦は“負の歴史”だったが
7月31日に行われたニュージーランドとの準々決勝は、スコアレスのまま120分間を終え、PK戦へ突入する展開となった。
決勝トーナメント初戦でのPK戦は、日本サッカー界にとっていい思い出がない。
2000年のシドニー五輪準々決勝のアメリカ戦では中田英寿のキックが左ポストを叩き、2010年南アフリカW杯ラウンド16のパラグアイ戦では駒野友一のキックがバーに嫌われた。
東京五輪世代でいえば、久保建英と谷晃生が出場した2017年U-17W杯のラウンド16でも、イングランドにPK戦で敗れている。
その負の歴史が、この日、変わった。
自らキッカーに名乗り出た4人の勇敢な男たちが自身のミッションをまっとうし、威風堂々とした守護神がひとりのキックをストップ、もうひとりのキックを失敗へと導いた。
1人目のキッカー上田が口にした頼もしい言動
1人目のキッカーに手を挙げた上田綺世は、責任を感じていたという。82分に堂安律のクロスからシュートを放ったが、相手GKに止められていたからだ。
「この状況(PK戦突入)を作ったのは自分。取り返すことはできないけど、自分がしっかり決めてチームを勢い付かせることしか僕にはできないと思ったので、1本目に立候補しました」
エースストライカーらしく、言動ともに実に頼もしかった。