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「試合に出られないならやめろ!」スポーツ界でも“毒親”たちの“虐待”が…重圧で「眠れない」と泣く子どもも 

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島沢優子

島沢優子Yuko Shimazawa

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photograph byGetty Images

posted2021/05/28 06:00

「試合に出られないならやめろ!」スポーツ界でも“毒親”たちの“虐待”が…重圧で「眠れない」と泣く子どもも<Number Web> photograph by Getty Images

必死にスポーツ指導をする親が、わが子を虐待する“毒親”になってしまうことがある

「試合に勝つことが、最も重要であると思いますか」

 ミニバスケットのチームがすべて前述のようなチームではないだろうが、日本バスケットボール協会もこのような傾向があることを重く見ている。対策のひとつとして「保護者アンケート」を4月5日から5月末日まで実施中だ。

「あなたは、チームが試合に勝つことが、最も重要であると思いますか」

「保護者の中には、試合中に応援席から『プレー』に対して指示する方がいますか」

「子どもやチームメイト、コーチなどに対して、感情的な言葉や不適切な言葉を投げかける保護者が自チーム内にいますか」

 そのように保護者の実情を尋ねる質問に加え、「試合中のコーチによる指示・激励の言葉に、暴言などの問題があると感じたことがありますか」といったコーチに関するものもある。回答は、例えば「思う・やや思う・あまり思わない・思わない」といった4段階から選ぶ簡単なものだ。協会公式サイトの「U12 カテゴリー保護者アンケートご協力のお願い(2021年 5月末〆切)」に、「保護者のみなさまから率直なご意見を伺い、『見える化』して、課題解決に取り組んでいきたい」と書かれているように、保護者の目を通して指導環境の実態を探る狙いがありそうだ。

 しかも、部やクラブを通さないため、回答者が特定されずプライバシーを厳守できる。このあたりの工夫からも、同協会の小学生のプレー環境向上への本気度がうかがえる。結果はサイト上で公開するそうなので、該当者はぜひ参加してほしい。

親世代が受けた指導では、今の子どもは伸びない

 500名の会員が所属する一般社団法人あきる野総合スポーツクラブ(東京都あきる野市)の理事長で、サッカー指導者でもある高岸祐幸さんは、3年前から保護者向けのセミナーを実施している。

「僕らは主体性や自主性を大事にした指導をしているが、もっと怒鳴ってでもやらせてという親御さんの意見があったので保護者にも勉強してもらおうと思った。親世代が受けた指導や子育てをそのまま踏襲してしまうと、今の子どもは伸びない。子どもを真ん中に、指導者と親が同じ方向を向いて取り組むのが重要だと思っている」

 怒鳴って厳しくすることは昭和で美談だったかもしれないが、令和ではそうではない。不適切な言葉は、心理的な暴力、虐待と受け止めたい。

 大事な子どもを成長させるために、保護者は時代の変化を学ぶべきだ。

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