松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
JRA騎手からパラ馬術へ転身の高嶋活士が騎乗のコツを「力まない」と語るも、松岡修造は「僕に一番向いてない」
posted2021/05/30 11:00
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph by
Yuki Suenaga
松岡修造がパラアスリートとじっくり向き合い、半生を掘り下げていく「松岡修造のパラリンピック一直線!」。連載第15回はパラ馬術の高嶋活士(たかしま かつじ)選手をゲストに迎える。
松岡さんがやって来たのは埼玉県深谷市にある乗馬クラブ「ドレッサージュ・ステーブル・テルイ」。ドレッサージュは「馬術」、ステーブルは「厩舎」を意味する。
ここは高嶋選手の練習拠点で、オーナーの照井愼一さんは2016年リオデジャネイロオリンピック馬場馬術日本代表監督を務めたスペシャリストだ。高嶋選手もまた元JRA(中央競馬会)の騎手という華々しい経歴を持つ。
高嶋選手が障害レース中に落馬事故に遭ったのは2013年2月のこと。懸命のリハビリの末、右の手足に麻痺が残り騎手としての復帰は果たせなかったものの、パラ馬術に転向。競馬で培った高い乗馬技術を武器に東京パラリンピックを目指すまでになった。
技の正確さと美しさを競う馬術に対し、競馬はレースの駆け引きとスピードを競う。いわば両者は「静」と「動」。その違いやパラ馬術の基本について、松岡さんが高嶋選手の練習を見学しながら、照井さんに教えてもらうところからインタビューは始まった。
オリンピック競技と遜色ないレベルの「グレードⅣ」
照井:(練習中の高嶋選手に向かって大きな声で)そーう! そーう! そこ、しっかり!
松岡:うわ〜、カッコいいですね。こうやって拝見していると、高嶋選手に障がいがあるなんて全く感じられません。
照井:そうですね。オリンピックの馬術もパラ馬術も乗馬の基本は変わりませんし、特に彼が出場する「グレードIV」は障がいの程度が軽いクラスですから、健常者と遜色ないハイレベルな技術が求められます。ちなみにパラ馬術にはグレードI〜Vの5つのクラスがあって、Iが最も障がいの重いクラスです。
松岡:オリンピック種目には馬場馬術のほかに障害馬術と総合馬術(馬場馬術、障害馬術、クロスカントリーの3種目で行う)がありますが、パラリンピック種目にはないんですか?
照井:はい、パラリンピックは馬場馬術のみです。ジャッジの対象となる運動はグレードIが常歩(なみあし)のみ、グレードIIとⅢは常歩と速歩(はやあし)、グレードⅣとVは常歩と速歩に駈歩(かけあし)が加わります。さらに斜めに歩いたり、馬の後肢を軸にして旋回する常歩ピルーエットのような複雑な動きも入って、それぞれの運動について審判が細かく精度を見ています。