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「試合に出られないならやめろ!」スポーツ界でも“毒親”たちの“虐待”が…重圧で「眠れない」と泣く子どもも 

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島沢優子

島沢優子Yuko Shimazawa

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photograph byGetty Images

posted2021/05/28 06:00

「試合に出られないならやめろ!」スポーツ界でも“毒親”たちの“虐待”が…重圧で「眠れない」と泣く子どもも<Number Web> photograph by Getty Images

必死にスポーツ指導をする親が、わが子を虐待する“毒親”になってしまうことがある

コーチがプレー中の子どもをベンチ前に呼んで…

 同じく首都圏のサッカー少年団でコーチを務める会社員の男性は、小学校中学年の息子が友達に誘われミニバスケットボールクラブに入りたいと言うので一緒に練習を見に行った。クラブのコーチは、子どもが何かできないと罰として腕立て伏せやフットワークのようなものをやらせていた。常に厳しい声で指示が飛ぶ。

「同じ地域なのに、自分が指導する少年サッカーは、今は子どもに自分で考えさせる指導が主流になりつつある。こうも違うのかと驚きました」

 翌週試合を見に行って、またも衝撃を受けた。「バカ」「走れよ!」「やる気はあるのか?!」など、どのチームも、コーチが当たり前のように選手を怒鳴っていた。

「一番びっくりしたのは、コーチがプレー中の子どもをベンチ前に呼び叱責していたことです。本当に驚きました。子どもは直立不動で、ハイ!ハイ!と返事をしていました。その間、4対5ですよね? 審判はベンチが暴言を吐くとテクニカルファウルがとれると聞いていましたが、まったくとっていませんでした」

「理不尽な行いに親が同調している気さえしました」

 長く所属する高学年の保護者に「これってどうなんですか?」と恐る恐る聞いてみた。涼しい顔で「どの大会でも、いつもこんな感じですよ」と返された。クラブの保護者代表に入団辞退の理由を話すと「監督は子どものためを思ってやってるんだけど……」と困惑された。

 男性は「保護者が麻痺していると感じました。暴言や理不尽な行いに親が同調している気さえしました」と憤りを隠せない。結局、息子に「この環境で君にスポーツをやらせたくないんだ」と親としての気持ちを話して、諦めてもらったという。

【次ページ】 「試合に勝つことが、最も重要であると思いますか」

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