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「ブレーメンでMF起用」不遇の大迫勇也が“代表初のハットトリック”で証明した自らの“戦闘スタイル” 

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寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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posted2021/03/31 18:10

「ブレーメンでMF起用」不遇の大迫勇也が“代表初のハットトリック”で証明した自らの“戦闘スタイル”<Number Web> photograph by JMPA

モンゴル戦で代表初となるハットトリックを達成した大迫勇也

「ゴールに近い場所で、やりなれたポジションなので何も考えずにプレーできる」

 1トップでプレーしたストライカーは、まるでサッカーを始めた子どものようにシンプルにその魅力を語っている。ハツラツとした表情からは、ストライカーとして評価される日本代表での活動が、彼にもたらしたものの大きさが伝わってきた。

 昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、代表への参加も見送られてきた大迫にとって、今回の代表活動は、大きな意味があったはずだ。原点回帰、自信を取り戻すチャンスだったに違いないのだから。

「ポジションも違うし、クラブと代表とは違うと切り替えている」

 あっさりとそう話したが、自身が正当に評価されない所属クラブでの現実が彼にもたらす影響は生易しいものではないはずだ。ストライカーとしてではなく、MFとしての序列に並ばされているのだから。自分の存在価値、プレーヤーとしての矜持を否定されたような気持ちになっても致し方ない。

「(ドイツでは)難しい時期もあったが、常に全力でプレーして、コンディションを落とさないようにしていた」

 与えられた仕事を果たすことに尽力しながらも、彼のなかでストライカーとしての嗅覚が衰えることはなかった。求められていることが変わっても、自分の武器を見失わず、ブレることなく、日常のルーティンを消化し続けてきたからこそ、日本代表でエースはエースとしての仕事を果たした。それは大迫勇也にとってだけでなく、日本代表にとっても喜ばしいことだった。 

日本代表に「海外組」「国内組」の区別はない

「レベルの高い相手との試合で高いパフォーマンスを出せる経験がチームには必要。上のレベルで誰かがプレーすれば、下も刺激を受けて良くなっていく」

 キャプテンの吉田麻也は、欧州でプレーする選手が増えていくこと、欧州のトップチームでプレーする選手の存在が日本代表にもたらす影響について語ったが、厳しい競争下に置かれることで伸びる選手もいれば、自信を失い迷走してしまう選手もいるはずだ。試合に出ることの重要性は、リバプールからサウサンプトンへ移籍した南野拓実も語っている。とはいえ、吉田が望む「上のレベルでプレーする選手」の存在が大切なのは、過去の日本代表を見ていれば、容易に理解できる。

 2010年の南アフリカ大会以降、2014年ブラジル大会、2018年ロシア大会を戦った日本代表の意識を押し上げていたのは、“上のレベルでプレーする選手たち”だった。

 約1年半ぶりの国内での代表活動には、Jリーグでプレーする多くの選手が参加し、それぞれが躍動を見せた。そして、取材の現場では何度も「海外組」「国内組」という言葉を使った質問が飛んでいることに、「今更」という感じがしないでもなかった。

【次ページ】 変わらない「大迫流の戦闘スタイル」

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