甲子園の風BACK NUMBER
【センバツ】寮長や元コーチャーが本塁打、昨秋ベンチ外→甲子園で好投… “背番号2ケタ”と“控え”が大活躍のワケ
text by
間淳Jun Aida
photograph byKYODO
posted2021/03/28 17:04
今大会センバツ第1号を放った「17番」の鈴木悠平。彼のような選手の活躍にベンチ全体が沸くのも当然だ
冬に入る前、高橋監督からコーチャーを続けるのか、もう1回選手で勝負するのか話し合ったという。
「選手でやりたい」
櫛田は自身が出した答えが正解だったと証明するため、1分、1秒を無駄にしなかった。身長165センチ、体重65キロ。小柄な体でも球威に負けないスイングを目指し、バットを振り続けた。朝の練習後や授業後にも食事を取り、体重は高校に入学した時から13キロ増やした。
高橋監督は「何よりも練習に取り組む姿勢。紅白戦でも悔いは残さないと1打席にかける思いがあった。その思いが最後のメンバー選考のところで信じてみたいと思わせた」と明かす。そして、こう続けた。
「体が小さくて非力なところもあるが、それに負けない気持ちが練習に出ていた。よく練習を積んできた。結果だけではない、練習への取り組み方、気持ちの部分も評価した」
公式戦初打席で「結果を出せるようにという気持ちで」
専大松戸戦で途中出場した櫛田は公式戦初打席が甲子園だった。
その最初の打席、2度目のスイングでランニングホームランを放った。決勝点をたたき出す一振り。それでも、謙虚さは変わらなかった。
「限られたチャンス、1打席で結果を出せるようにという気持ちで打席に入りました。自分の活躍というよりチーム全員でつかみ取った勝利なので、そこが一番うれしいです」
チームをベスト8に導く先制ソロで、ダイヤモンドを悠々と一周した明豊の米田も控えめな言葉は同じだった。
「今までに味わったことのないうれしさでした。『当たり前のことを当たり前にやる人は結果を出せる』と監督がずっと言っていたことを、信じてやってきてよかったです」
出場機会がなかった選手たちがセンバツ直前に急成長を遂げ、大舞台で活躍する理由――それは成長の機会を遅らせた、目には見えないウイルスの存在だけではない。
甲子園には魔物だけではなく、神様も潜んでいるのだろう。
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