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「今日はダメだ」“8回164球”3失点の達孝太(天理)はどこで立ち直った? 自己採点は辛口「30点」→「60点」→「0点」【センバツ】
posted2021/03/29 15:25
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
KYODO
「全部、三振を取るつもりで」――。
次戦の抱負を聞かれると、天理の達孝太は、決まってそう答えた。
この日の相手は、前の試合で13点を奪った仙台育英。強力打線を前に、その「気持ち」が前に出過ぎた。
1番、2番と連続三振を奪い、好調を予感させたが、そこからは一転、3連続四死球で満塁に。何とか無失点に切り抜けたが、良くも悪くも、荒々しい立ち上がりだった。
「初回、ギアを上げ過ぎたというか、入り方を間違えた。感覚をつかんでから全力で行くのはいいんですけど、先頭も、2人目も、3人目も、力任せに行ってしまった」
出だしの出力を誤った達は、2回は2四球、3回はホームランを含む4安打を集中され2−2の同点に追いつかれる。監督の中村良二が「こんなこともあるんだ」と驚くほどの乱れようで、立ち直りそうな気配は全く見えなかった。
捕手政所は「表情もめっちゃ硬かった」
そんな達を奮い立たせたのは、味方打線だった。4回裏、相手の失策に乗じて一挙に4得点。萎えかけた達の気持ちに火が灯った。
「実は、4回まで、今日はダメだな……って思って投げていた。とりあえずストライクを取りに行って、(あとは)打ってくれ、という感じで。でも、4点を取ってもらって、気持ちのスイッチが入った。そこからは気持ちを入れて投げられました」
捕手の政所蒼太のミットにも、その変化ははっきりと感じられた。