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ハードワークを美化せず…昇格大本命・京都サンガに見る“湘南スタイル” 最強「川崎Fスタイル」と何が違う? 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byJ.LEAGUE

posted2021/03/28 06:00

ハードワークを美化せず…昇格大本命・京都サンガに見る“湘南スタイル” 最強「川崎Fスタイル」と何が違う?<Number Web> photograph by J.LEAGUE

武富孝介、ピーター・ウタカによる2点で、大宮に勝利した京都サンガ

 また、曺監督は、プレーしている選手も見ているファンもともに楽しめるサッカーを追求し、「これが自分たちのサッカーだ」というものを自信をもって披露することを重視していた。そのサッカーでスタジアム全体が熱病にかかったように沸騰する空間を作り出すことが「湘南スタイル」そのものであると考えていた。

 19年半ばにチームを去るまで7年間、曺監督は選手が入れ替わる中、スタイルを常に進化させ、「湘南スタイル」をクラブに定着させた。それは単にピッチ上だけに限らず、湘南ベルマーレのアイデンティティになり、今も継続されている。

「川崎スタイル」と「湘南スタイル」の違い

 Jリーグで現在、内容と結果を両立する本物の「スタイル」を確立しているクラブは、川崎ぐらいだろう。川崎は2012年に風間八宏前監督を招聘し、今のスタイルの礎を作り、2017年に鬼木達監督が守備というエッセンスを加味し、唯一無二の「スタイル」へと昇華させた。

 この2チームの違いは、川崎が風間前監督と鬼木監督がタッグを組んだ二段階方式なのに対して、曺監督は単独でスタイルを作り上げているところだ。この差はどういうところに出てくるのかというと「時間」だ。

 川崎は、風間前監督からリーグ優勝するまで6年間必要だったが、曺監督の率いた湘南はJ2でカテゴリーが異なるとは言え、3年目の2014年にJ2優勝を果たしている。勝ち点101(31勝8分3敗)、86得点を上げ、圧倒的な強さだった。この勝ち点は42試合になった2012年から破られていない記録でもある。

 湘南スタイルのベース作りに寄与したチームには、遠藤航(シュトゥットガルト)、永木亮太(鹿島)、菊池大輔(栃木)、菊地俊介(大宮)らに加え、今年、京都でプレーしている武富孝介、白井康介、中川寛斗らも所属しており、とにかく向上心の強い選手が多かった。

 曺監督は彼らに進むべき方向を示しつつ、最終的な判断は選手に任せ、自立してプレーすることを促した。武富らは、そのころから“曹イズム”を叩きこまれており、だからこそ今年も京都に呼ばれたともいえる。現在のチームにも湘南時代の教え子である松田天馬を始め、福岡慎平、荻原拓也、川崎颯太ら自らの価値を高めよう、チームに貢献しようという意識の高い選手が多い。

過去から着実に学び、昇華したマネジメントスタイル

 曺監督は、選手に対しては湘南時代と変わらない方向性で指導しているようだ。

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