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ハードワークを美化せず…昇格大本命・京都サンガに見る“湘南スタイル” 最強「川崎Fスタイル」と何が違う?
posted2021/03/28 06:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
J.LEAGUE
「よっしゃ」
静まり返ったNACKスタジアムに京都ベンチから控え目な歓喜の声が響く。
前試合、ホームで磐田に4点を叩き込まれ、3-4で敗れた。中2日で臨んだ大宮戦、ここで負けるとズルズルいく危険性をはらんでいたが、勝利で食い止めることができた。
13日に雷による影響で延期となり、試合は前半19分、1-0から再開された。先制点は、中止1分前に生まれた。右サイドの飯田貴敬から中央にいた武富孝介にロングボールが入り、胸で落としたボールをピーター・ウタカが受け、左サイドの荻原拓也に展開。荻原はそれを持ち込んでシュートを放ち、GKが反応したが、こぼれたボールを武富が詰めた。まるで練習のように美しく、攻撃の完成度の高さを見せつけたゴールだった。
「このまま新幹線にのって京都に帰っていいのか!」
この日も京都の選手はアグレッシブだった。
前から猛烈なプレッシングをかけ、ボールを奪うとピーター・ウタカに入れて、コンビネーションで崩していく。選手の動きがオートマティックなので、相当の練習量をこなし、選手間で意志疎通が取れていることが見て取れる。
前半終了間際に荻原のミスで同点に追いつかれたが、後半はさらに攻撃が加速した。曺貴裁監督がハーフタイムに「このまま新幹線にのって京都に帰っていいのか!」と檄を飛ばしたのが功を奏したのか、選手の動きが鋭くなった。外から中、中から外と目まぐるしく選手が入れ替わり、相手に的を絞らせない攻撃で決定的チャンスを何度も作った。ウタカのPKは、攻め続けた京都への神様のプレゼント、もはや必然だったとも言える。
このサッカーの精度が増し、定着していくと、“サンガスタイル”になるのだろう。
と同時に曺監督の目指すスタイルは湘南時代から変わらないなと感じた。
選手もファンも熱狂する「湘南スタイル」
サッカーファンに浸透した「湘南スタイル」は、以前所属していた湘南で曺監督が確立したスタイルだ。攻守の切り替えが早く、攻撃ではより人数をかける。「攻撃は最大の防御なり」をそのまま実践しているサッカーで、このスタイルがファンやサポーターの心をつかんだ。