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ハードワークを美化せず…昇格大本命・京都サンガに見る“湘南スタイル” 最強「川崎Fスタイル」と何が違う?
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/03/28 06:00
武富孝介、ピーター・ウタカによる2点で、大宮に勝利した京都サンガ
選手は伸び伸びと、とても楽しそうにプレーしている。選手への愛情の深さも昔と変わらない。この日、自らのバックパスから失点し、号泣していた荻原には「泣いても前に進まない」と厳しい声をかけつつ、試合後の記者会見では「あいつはチームを勝たせたい、うまくなりたいという気持ちがすごく強い子なので、今日の経験があいつを伸ばすと思います」と、今後の成長に期待していることを述べた。公の場では責めないことで、プロとしてしてはいけないプレーだったことを逆に本人に強く認識させている。ただ、試合後はおそらくフォローの言葉をかけ、荻原の気持ちを前向きに修正していることだろう。
湘南時代と異なるのは、怒らなくなったことだろうか。パワハラ問題の後、曺監督はアンガーマネジメントを学び、怒り方を覚え、自制するようになったという。
ハードワークを美化しない
「我々は1戦1戦、1日1日強くなっていくことを目標にしている。今日、改めて選手に言ったのは、我々はもっと強くなれるし、もっと強くならないといけないということ。そのために毎日サンガタウンでいい競争をして学んだことを明日から活かしていこうと」
曺監督は、試合後、そう語った。
ハードワークを美化せず、それが当たり前のアグレッシブなチームになろうという姿は見えている。コンビネーションで崩すスタイルは、サッカーの美しさを追求しているようだ。1点はどんな形でも1点だが、そこにこだわりを持つことは大事なこと。研究されようがマークされようが、その上を行くように選手に成長を促し、より強力なスタイルを確立していく姿勢にブレはない。もしかすると曺監督は、2014年の再現ではなく、それ以上の強さを証明し、新たなスタイルを確立しようとしているのかもしれない。
<参考>「なぜ曺貴裁監督のハラスメント問題は起こったのか?」から考える“深刻なサッカー界のメンタル事情”
https://number.bunshun.jp/articles/-/847034