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【インタビュー】29歳武尊が語る“過去最高の自分”「魔裟斗さんは一番強い時に引退した。そういう感覚に近い」 

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田中大貴

田中大貴Daiki Tanaka

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2021/02/20 11:04

【インタビュー】29歳武尊が語る“過去最高の自分”「魔裟斗さんは一番強い時に引退した。そういう感覚に近い」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

昨年の大晦日、RIZINの会場に訪れて話題を呼んだ武尊。今は3月のタイトルマッチしか見ていない

ヒーローはアンディ・フグ、井上尚弥は

――武尊選手がこれまで一番影響を受けた試合はありますか?

武尊 最初はアンディ・フグ。1996年ですかね、アンディ・フグがK-1チャンピオンになったとき。ヘビー級のなかでは身体が小さいじゃないですか。僕もそんなに大きいほうじゃなかったので。

――まだ小さい時の話ですよね?

武尊 空手を始めたのが8歳なので、観たのはもっと前。たぶん、ビデオか何かで観ていたんだと思います。ウルトラマンとかヒーローものって、自分より大きい怪獣を倒すじゃないですか。それを格闘技で感じた。衝撃をリアルで感じちゃったんです。自分より大きい人を倒してチャンピオンになったアンディ・フグがヒーロー。その衝撃はやっぱすごく大きかったし、自分の中にもずっと残っていますね。

 だから、階級を上げて、自分より大きい人を倒す美学みたいなものがある。空手のときは無差別の試合しかないので、自分より体重が1キロでも2キロでも重い人に勝ったときのうれしさはすごく記憶に残っているし、それは今も変わらないです。

――先ほど、ボクシングを取り入れているとの話もありました。井上尚弥選手が階級を上げて、しかも欧米人のトップランカーたちと戦って勝っていく姿は、刺激になりますか?

武尊 尚弥君も今、3階級でしたよね。確か、同じタイミングで大きな相手と戦ったことがあって、その時に話をしたんです。尚弥君の相手(ジェイミー・マクドネル)が計量のときからリカバリーしていて、「なに、このサイズ?」というなかでKOしたことがありました。

 ちょうど僕もそのあとにダニエル・ピュータスという選手と試合をやりまして。ピュータスはもともと65キロのチャンピオンで、K-1のときも「1人だけ身体のサイズが違うぞ」って感じで。あのときに、僕は60キロの階級に上げたばかりだったので試合当日は62、3キロ。でも向こうは70キロをたぶん超えている。向かい合ったときのサイズがもう……(笑)。でも、その前に尚弥君が大きい選手を倒していたので、刺激を受けたところがあった。本当にすごいアスリートだと思います。

――井上選手のパンチなどから真似できるなとか、試合に使えるなと考えたりはするのでしょうか?

武尊 パンチのプロフェッショナルなので、参考にさせてもらっています。特にすごいと思うのは左のパンチ。ジャブもだし、ボディとか、フックとか、全部。インパクトのつけ方がすごいなと。

――インパクトのつけ方?

武尊 言い方は悪いですけど、素人の人でも利き腕で振りかぶれば、パンッと打てるじゃないですか。でも、その利き腕とは逆の手でインパクトをつけることは難しい。格闘家でもなかなか。

――倒せるパンチ?

武尊 そうです。当たった瞬間の衝撃、倒せるパンチのことです。それがほんとにうまいなと思います。ボクシングはあまり詳しくはないのですが、他の試合もよく観ていますね。それこそ、ディフェンステクニック。ボクサーは「こう来たら、こう動く」というある種、マニュアルに近いものが完成されている。だから(フロイド・)メイウェザー選手のように40戦、50戦負けなしという選手がいる。でも、キック界ではなかなかそれが難しくて、事故みたいな負け方をしたりすることもあります。ボクシングはそれだけ完成されているスポーツなので、それをK-1にも採り入れたいんです。使えるテクニックはいっぱいあるので。

流行のカーフキック「その先を目指している」

――最近では総合格闘技で話題になったカーフキックが流行っていますね。キックボクサーならばディフェンスできるという見方があります。

武尊 スパーでもみんな蹴っていますし、この前のKrushでもカーフキックで痛めつけて、KOする試合が多かった。格闘技界には流行りがあって、もともとカーフキックという技はありましたし、ちょっと前だと三日月蹴りが流行りましたよね。まあ、でもカーフキックに反応できる選手は、絶対に対応できると思いますよ。

――それはMMAだろうが、K-1だろうが関係ない?

武尊 MMAは、ローキックにタックルを合わせたり、蹴りにタックルを合わせるという技術がある。蹴らしておいてつかみにいくみたいな。それがあるから(カーフキックが)入りやすいんじゃないかと。でも、キックの選手でも反応できない選手はいますし、それにローキックをカットせずに踏ん張って耐える選手もいます。ローが効かない選手はあえてカットせず、むしろ踏ん張って、筋肉をガッと固める。それでブロックしたほうが、攻撃に移りやすいですから。でもそういう選手は逆にカーフキックを食らったら効いちゃいますね。

――武尊選手はどっちなんですか。

武尊 僕は両方使います。カーフキックをブロックするだけだと、(ダメージを)もらわないかもしれないけど、その先がない。だからその先を練習しています。それをもらわない練習ではなく、それをどう攻撃につなげるかというところを考えられている選手は、たぶん、ちょっと先に行くんじゃないかなと。

――ありがとうございました。3月の試合も楽しみにしています。

武尊 ありがとうございました。

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