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今季の箱根駅伝、“補欠”が豪華すぎる事情 國學院大・前田監督「じつは“当て馬”というフェイクもありうる」
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2020/12/30 11:10
青学大主将・神林勇太(4年)。昨年は9区を走り区間賞の活躍だったが、29日のエントリー発表では補欠に
山上り・5区の当日変更は明大、早大、駒大あたり?
一方で2区の顔ぶれは、
青学大…中村唯翔(2年)、東海大…名取燎太(4年)、國學院大…中西大翔(2年)、帝京大…星岳(4年)、明大…加藤大誠(2年)、早大…太田直希(3年)、駒大…田澤廉(2年)、東洋大…松山和希(1年)
「主力を補欠に登録するチームが多いのでは……」という声も聞かれたが、蓋を開けてみれば、2区に関しては順当に各大学のエース級の名前があった。青学大は勢いのある中村を抜擢。注目の駒大・田澤も2区に登録された。
また、特殊区間の山上り・5区も、複数候補を抱えるチームは、いずれかを登録している。上位校で当日変更がありそうなのは、明大、早大、駒大あたりだろうか。
明大は、第1候補の鈴木聖人(3年)が補欠登録されたが、「2区の加藤に何かがあった場合に備えて」(山本駅伝監督)のこと。現在登録されている樋口大介(4年)も5区の準備をしてきており、万が一への備えも十分できている。早大は、11月にハーフマラソンのタイムトライアルで好走した諸冨湧(1年)が登録されたが、主将の吉田匠(4年)も調子を上げてきており、いずれかが担うことになりそうだ。駒大は、山上りを2度経験している伊東颯汰(4年)が8区に登録されたため、3年連続の5区はなくなった。現時点は円健介(2年)が登録されているが、ルーキーの鈴木芽吹(1年)が補欠に控えているのが不気味に映る。
これまでも2区と5区は、極めて当日変更が少ない区間だ。ちなみに、過去10大会の総合優勝校でこの2区間で当日変更があったのは、2014年の第90回大会を制した東洋大の1例しかない。この時、5区には1年生の成瀬雅俊が登録されていたが、当日変更でエースの1人、設楽啓太(当時4年、現・日立物流)が走り、区間賞の走りを見せた。
「実は“当て馬”だったというフェイクも」
また、「非常時のバリエーションも広がりました」と國學院大の前田監督が話すように、交替枠が増えたことでギリギリまで、選手の状態を見極めることも可能になっただろう。これまで当日変更の人数は、往路よりも復路のほうが圧倒的に多かった。今回も万が一に備えて補欠登録されていた主力選手が、復路では多数起用されることが予想される。
「順当に見せかけて、実は“当て馬”だったというフェイクもありうる」と前田監督が言うように、実際には当日に蓋を開けてみるまでは分からないが。6人の当日交替枠が、箱根駅伝のゲーム性をいっそう高めるのは間違いないだろう。