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「このままでは韓国・台湾に勝てなくなる…」社会人野球の“強い危機感”はプロ野球に届くか?【野球データ革命】
posted2020/12/14 17:03
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
KYODO
実況アナウンサーが実感を込めて説明していたのが印象的だった。
「選手の数だけ、特徴があるということですね」
その問いかけに解説者たちも相槌を打つ。
「データを元にすれば、目標の選手に近づかせる育成も出来るんです」
これ、野球中継では初めてと言っていい成果が生まれた瞬間だった。
今月3日に幕を閉じた都市対抗野球大会ではホンダが11年ぶり3度目の優勝を果たした。その中継で、今年からちょっとした試みが行われた。これまでの実況と解説、リポーターに加えて、アナリストと呼ばれる“職種”がデータ解説者として新たな役割を与えられ中継に参加。球場に備え付けられたトラックマン(弾道測定機器)のデータを参照して分析し、選手の特徴を伝えたのだ。
取り上げられるデータは、投手の「球速」「ボールの回転数」、打者の「スイング速度」「角度」「飛距離」などだ。
例えば、決勝戦の実況でネクストベース社の神事努氏は、今大会の首位打者賞を獲得、準決勝戦でグランドスラムを放った佐藤竜彦(ホンダ)の特徴をこう説明した。神事氏はバイオメカニクスの研究者として知られる指折りのスポーツ科学者だ。
「(準決勝のグランドスラムは)打球速度が180キロ、角度は25度で、長打が出やすいと言われるバレルゾーンのど真ん中の数値を出しています。飛距離は133メートル、かなり振ることができる選手であり、コンタクトする能力もあります」
メジャーリーグと日本の“大きな違い”
昨今の野球界はテクノロジー化が進んでいる。
プロ野球の11球団の本拠地球場にトラックマンが設置されるなど、各球団はこれまで得ることはできなかった新たなデータを元に戦略を練っている。データ運用は球団によってまちまちだが、時代の変化は確実に起こっている。