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【巨人、ホークスに“8連敗”】一目瞭然なセパ格差・投手編 なぜ先発完投より救援重視が“勝利の近道”か
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2020/11/27 11:00
シーズンは先発ながらリリーフに回った戸郷(左)。森らが盤石だったソフトバンクに比べると、巨人の救援陣は心もとなかった
5年前の段階では、両リーグの完投数に大きな差はなかった。むしろ2017年のようにパ・リーグがずっと多い年もあった。2017年は則本昂大(楽天)が8完投、菊池雄星(西武)、金子千尋(オリックス)が6完投と完投能力が高い投手がパ・リーグにいたことも大きい。しかし菊池がMLBに移籍、則本、金子の成績が下降していくとともに、パ・リーグでは完投数が激減した。そして救援投手の活躍の機会が増えた。
セ・リーグも完投数そのものは増えてはいないが、各チームには今も「先発完投型」のエースがいる。今季はその中でも中日の大野、巨人の菅野智之、阪神の西勇輝らという先発完投型の投手が活躍したこともあり、完投数は増加。そしてセーブ数、ホールド数は減少した。
山本由伸や千賀は十分完投できそうだが
現在のパ・リーグにも、オリックスの山本由伸やソフトバンクの千賀滉大など、頑張ろうと思えばもっと完投、完封数が増えそうな投手はいるが、彼らを擁する球団は9回まで投げることに固執せず、救援投手にスイッチするようになってきた。
最近になってパ・リーグ各球団の投手起用の考え方が変わってきたのではないかと考えられる。先発の投球過多を回避し、肩、肘の損耗を防いで、長持ちさせようとする意識が強くなったのだろう。
巨人の救援陣を支えた高梨と鍵谷は……
端的に言えば昭和以来の「先発投手重視」のセ・リーグと、「救援投手重視」のパ・リーグ。
両リーグの野球はくっきりと分かれているのだ。
セ・リーグの球団は先発投手にできるだけ長く投げてほしい、できれば完投を――と期待するケースが多い。しかし先発が降板した後は、先発より力の落ちた救援投手が投げるケースがままある。優勝チームの巨人でさえも「勝利の方程式」は確立されていなかった。
大竹寛、田口麗斗のように巨人の救援の中には先発から回った投手もいる。救援陣が充実していないことは、今季の救援陣を支えた高梨雄平(元楽天)や鍵谷陽平(元日本ハム)がパ球団からの移籍であることからもわかる。
また、日本シリーズで、本来、先発2番手のはずの戸郷翔征を救援に回したのも、原辰徳監督が救援陣に心もとなさを感じていたからだと思われる。
しかし、付け焼刃は通用しなかった。