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【巨人、ホークスに“8連敗”】一目瞭然なセパ格差・投手編 なぜ先発完投より救援重視が“勝利の近道”か
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2020/11/27 11:00
シーズンは先発ながらリリーフに回った戸郷(左)。森らが盤石だったソフトバンクに比べると、巨人の救援陣は心もとなかった
ムーア被安打ゼロの継投策が象徴
これに対し、パ球団は先発投手にはQS(6回投げて自責点3以下、先発投手の最低限の責任)か、7回を投げてくれればと期待し、そのあとには「勝利の方程式」が控えている。ソフトバンクで言えば圧倒的な奪三振率のモイネロ、左殺しの嘉弥真新也、そして走者を出しても粘り強い森唯斗らだ。今季の日本シリーズで巨人は彼らに屈したといってもよいだろう。
後ろに優秀な救援陣が控えていることで、パの先発投手は「6回、7回まで投げればいい」という意識になるはずだ。だから頭から飛ばしていく。完投も含めたペース配分を考えなければならないセの先発とは意識の部分でも違うのではないか。
11月24日の第3戦で、ソフトバンクの先発ムーアが被安打0のまま7回93球で降板し、モイネロにつないだ。これは現在のパの投手起用法を象徴している。
沢村賞がいても、強いチームとは限らない
「指名打者制」が導入された当初、打順が回って投手に代打を送って投手を交代させる必要がなくなるので、パ・リーグには長いイニングを投げる本格派の先発投手が増えるのではないか――と言われた。
確かに導入当初は、先発完投型の投手が増えた時期もあったが、エースクラスの投手のFA制度による移籍やMLBへの流出が続き、セーブやホールドという指標が導入される中で、ここ近年はパ・リーグの投手の価値観が大きく変わったのだ。
昭和の時代は全投球回数の3割近くを1人で投げる大エースがたくさんいた。多くの投手は300イニング、400イニングを投げていた。そんな時代は、両リーグともにエースを中心にチーム作りをするのが常道だった。
しかし、今の先発投手は昔の半分のイニング数しか投げない。これは、今の投手が駄目になったわけではなく、野球そのものが変質したのだ。今は、複数の優秀な先発投手と、専門的な救援投手陣がいるチームを作るのがセオリーになりつつある。
沢村賞投手がいても、強いチームができるとは限らないのだ。