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36歳西岡剛が語った野球界への焦燥と改革アイディア「気になるのはアフリカ」 

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田中大貴

田中大貴Daiki Tanaka

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photograph byWataru Sato

posted2020/11/18 17:01

36歳西岡剛が語った野球界への焦燥と改革アイディア「気になるのはアフリカ」<Number Web> photograph by Wataru Sato

BCリーグやMLBでの経験を還元していくと力強く語った西岡剛

一軍と二軍の選手にある差とは?

――久しぶりにお会いして、体が絞れているなと感じました。36歳になって技術的な部分、フィジカル、マインドなど、全盛期と比べて変化があるのは仕方ないですが、今はどんな考えでプレーしているのでしょうか。

 全盛期と比べちゃダメだけど、スポーツ選手って比べがちなんですよ。実際に僕も比べていた。頭がいいときの自分を蘇らせようとする。でも体も衰えているし、動体視力も下がっている。仮に練習でできたとしても、試合では当時の感覚でプレーすることは難しい。結局ね、野球は瞬発力ですから。そこはとても意識するようになりました。

 これは持論ですが、プロ野球に入るレベルの選手は小さい頃から何万球、何十万球とボールを打っている。だからある程度、形は完成しているの。もちろん技術や持って生まれた才能の差はある。でも一軍と二軍の選手にある大きな差は何かといったら、それは集中力と瞬発力。あとはどれだけスイッチのオンとオフを切り替えられるか。そこが大事なんです。

――それを考えると練習メニューも変わってきますね。

 一軍で活躍する選手より、二軍でくすぶっている選手のほうが、練習量は多いですよ。マシンを2時間バンバン。2時間なんて集中力も持たないし、自分もマシンのようになっているだけ。機械と機械の練習になっちゃう。ゴルフだったらいいんですよ、機械的になった方がいいから。でも野球は相手があってのスポーツ。相手に対していかに反応するかが大事でしょ。必要なのは、数秒の世界での集中力と瞬発力。

――いかに一球一球に集中できるかを養っていくべきだと?

 もちろん、基礎的な練習は必要な上で、ですよ。あともっと言うと、過度な緊張がある状態でグラウンドに立ったらダメ。絶対に固くなる。だからそれをうまくほぐすメンタルトレーナーがプロ野球界には必要だと思うんですよ。他の競技でも積極的に取り入れているでしょ?

将来、プロ野球界を引っ張っていくのは誰?

――西岡選手もそういう経験がある?

 あるある。たとえばその日、猛打賞を打っていたとしましょう。8回ぐらいにもう1打席回ってきたとしたら、気持ち的にはもう、どうでもいいの。だから打てちゃう(笑)。点差が開いている時も「今日、気分いいわ」ってパーンと打てる。逆にツーアウト満塁で一打逆転という場面にきたら、そうはいかない。でもその時にリラックスした自分をコントロールする能力や知識を持っていれば変わってくると思うんですよ。

 日本も変わってきたとはいえ、まだまだ根性論だったり、気合いが重視される。それも大事だけど、根性だけでは結果は残せない。「また二軍に落ちる」というメンタルで打席に入って、誰が初球から打てるんですか、とね。もちろん厳しい世界だからシビアでいいんですけど。そこはアメリカ、栃木を経験して感じたことの1つ。

――これまでと異なったアプローチもあっていい?

 みんな家族もいるから変えることはとても難しい。だけど、試すことはしてもいいでしょ? 決してこれまでの指導や野球を否定しているわけではないですが、今のプロ野球界は新しいことを試みる機会が少ない。将来、プロ野球界を引っ張っていくのは、今の伸び伸びと野球をやっている少年・少女。もっといえばこれから生まれてくる子たちなわけですよ。その子たちの才能をもっと引き出してあげる、引き出す努力を大人がしないと競技は衰退していくと思う。それをいち早くやったのがサッカーなんじゃないかと僕は思っています。

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