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西岡剛が明かす来季展望「野球を続ける」川崎宗則とプレーして感じた不思議な力とは?
posted2020/11/18 17:00
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph by
Wataru Sato
<聞き手:田中大貴>
――今季もお疲れ様でした。BCリーグ栃木での2年目のプレーを終えた今でも、NPB復帰への思いは変わりませんか?
そうですね、それは変わらないです。僕は根本的に野球が好き。だからやる以上は一番上を目指してやるという思いだけですね。
――9月に栃木との契約を更新しましたが、2020年当初はどんなイメージを抱いてシーズンに入ったのでしょうか?
NPBに復帰できる期間が7月30日までと規定で決まっていて、まずはそこにトライしようと考えていました。新型コロナの影響もあり、なかなかうまくいきませんでしたが、心境としては(NPBに)戻れなくてもいいぐらいに思っていたんです。こんなことをいうと「そんなやつが行ける世界じゃない」と言われてしまうから言葉にするのは難しいんですけど、なんかこう「常に目指しておきたい」という感覚というか。もう、戻れる戻れないで落ち込むことはないですよ。昨年が無理でも「おお、じゃ今年もやったろう!」という思いでしたし、2020年も無理だったけど「じゃ来年もまた目指したろう!」と、そんな繰り返し。考え方はシンプルですね。
――NPB復帰がすべてではない?
1年経つたびに(NPBに戻れる)確率は当然下がるでしょうね。でも、いいんです。こうやって野球を続けられているし、野球を通していろんな人に出会えている。最終的には野球をしながら旅をしたいんですよね(笑)。いろんな地に行って、いろんな世界に行って野球をする。そこでどこかのチームに入れたら最高ですけど。
――周囲の反応はどうですか?
周りの人には「もうやりきったんじゃないの?」とか「もうがんばらなくていいじゃん」と言われるけど、これまでもがんばっているつもりはないんですよ。好きだからやっているだけ。子どもの頃って好きなゲームがあったら、朝から晩までできるじゃないですか。その感覚と一緒ですよ。
――野球を辞める時はいつだと思いますか?
朝起きた瞬間に「あ、もう野球はいいな」と思ったらすぐやめると思います。
甲子園にうずくまったアキレス腱断裂
――これまでのキャリアの中で「引退」が頭を過ぎったことはあるんですか?
16年の夏、怪我から復帰してすぐにアキレス腱を切ったときは「もう野球人生も終わりか」と思いました。甲子園のグラウンドで倒れ、病院に運ばれ、この世の終わりぐらいにショックを受けて。でも救われたのは、病院から包帯グルグル巻きで出てきた僕を見た奥さんが大爆笑したこと。「何やってんの、ハハハ」みたいに。何をしたいのかもう一回考えた時に、決めたはずの「引退」を奥さんに伝えられなかった。そこで、まだ自分の中で決心しきれていないことに気づいたんです。だから、ここから僕の野球人生に「引退」はもうないなと。
――阪神を退団した後もすぐに現役続行を希望していましたね。
そのアキレス腱断裂から2年後の18年オフに戦力外通告をされ、球団からは引退試合を用意すると誠意をいただきました。本当に嬉しかったですし、球団には今でも感謝しています。でも、その時は34歳。まだプレーヤーとしてやりたかったわけですよ。
――それはNPBの舞台ではなくても?
(NPBに戻りたいと明言するのは)やる以上は少しでも高いレベルを目指さないといけないと思っているだけ。レベルなんか関係ないですよ。打って「うれしい!」、打てなくて「悔しい!」という感情に日々出会えるのが好きで。それをいまだに追いかけている。