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36歳西岡剛が語った野球界への焦燥と改革アイディア「気になるのはアフリカ」
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph byWataru Sato
posted2020/11/18 17:01
BCリーグやMLBでの経験を還元していくと力強く語った西岡剛
「N1」を目指す球団があってもいい
――練習方法以外にも組織として変化が必要だなと思うことはありますか?
球団を増やす案もそうですよ。Jリーグは毎年のように入替戦がありますよね。今、プロ野球は12球団しかなくて、毎年最下位になっても来年も戦う場所は用意されている。難しいことがたくさんあることは理解していますが、プロ野球界にも入替戦があってもいいんじゃないかなと個人的には思います。それが栃木でもいいんですよ。「N1を目指してがんばる!」というチームが全国にあれば、その地域の子どもたちの目に触れさせることができますし、野球界が盛り上がる。それにもっと他競技とリンクしてもいい。サッカーの育成を学んだり、ゴルフやバスケットやラグビーも全部が1つになって日本としてレベルを上げたっていいはずでしょ? でも今は野球は野球、サッカーはサッカー。もっと混合していいと思う。
――そこから世界に羽ばたく選手をどんどん出していく。
野球だったら、ドミニカ、ベネズエラ、プエルトリコの逸材が集まるのはアメリカ。サッカーだったらヨーロッパですよね。そこで1人でも多く活躍して、イチローさんみたいな選手が1人でも多く出たら、もうコングラチュレーションじゃないですか。素質があって才能がある選手は無理に日本で囲わなくていいんです。
――西岡選手自身もアメリカでプレーして良かったと思いますか?
確かに僕は思ったような結果を残せずに戻ってきたけど、行ったことは経験として、勉強として、今の自分の考えに繋がっているから成功だと思っていますよ。第三者は結果で判断していいと思うのですが、人生なんか経験した者勝ちで、経験できるのだったらどんどん行くべき。今年もたくさんメジャーに挑戦した選手がいますよね。期待通りの成績を残せなかった選手もいるけど、そんなの気にしなくていい。その舞台に立てていることがすごいことだから。向こうには自分よりもっとすごい選手がいて、そこに感銘を受けて、まだまだだったなと感じ取って、こんな考えがあるのかと学んで、いずれ還元すればいい。野球界もサッカーのように若いうちからどんどん海外に行ってもいいと思いますよ。
――モチベーションはまだまだ尽きないですね。
尽きないですよ。プロ野球以外の世界を知ることはセカンドキャリアにも絶対にいいと思う。みんなYouTubeをやっていますが、それだってそうそう甘い世界じゃないし、今や解説者だけじゃ食っていけないですから。それに野球界をもっとよくしたい思いが強い。プレーしてきた僕らがどんどん発信していくべきだと思います。
アフリカの身体能力が気になる
――今、他に考えていることはあるんですか?
気になるのはアフリカ。ずば抜けた身体能力を野球界に還元できたらすごいなって。今はサッカーや陸上、格闘技がメインだけど、いろんな企業とタイアップして少年・少女の夢に投資していただき、夏休みや冬休みでもいいから、才能ある子どもたちをMLB、NPBに押し上げるアカデミーを海外につくれたらおもしろいと思う。世界の文化に子どもの頃から触れ合える場所があれば、言葉も世界観、視野も広がり、経験値だって上がる。MLB、NPBに入団させたらその数%をもらうとか、そういうビジネスだってできるかもしれない。日本もあるけど、MLBのほとんどの球団はドミニカにアカデミーを持っていますし、できなくはないですよね。
――逆に日本の若い選手たちのチャンスも広がる?
まさにそう。そういう組織があれば、日本の有望株たちを短期間でもいいから研修に出したり。16歳、17歳でもホームランをバコバコ打つ選手を目の当たりにすれば、刺激になるだろうし、価値観も変わる。また、そこで得た資金で高校生や大学生たち用にサプリメントを購入するとか、そんなこともできるかもしれない。視線を上げる仕組みや還元する仕組みをもっとつくっていけたらいいですよね。
僕自身、若い時は周りが見えていなかったし、自分さえ良ければと思っていた選手でした。だから説得力もないでしょう? 考えることは好きだから、発信はムネさんに任せる(笑)。ムネさんともリンクする部分があるので、僕ら世代で野球界をどんどん変えていきたいと思っています。
【前編から読む】西岡剛の来季展望「野球を続ける」川崎宗則とプレーして感じた不思議な力とは?
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。