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地方大学からなぜ好選手が続々? サブマリン牧田を育てた監督が期待する「デカいエンジン」 

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高木遊

高木遊Yu Takagi

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posted2020/09/29 10:00

地方大学からなぜ好選手が続々? サブマリン牧田を育てた監督が期待する「デカいエンジン」<Number Web> photograph by Yu Takagi

リーグ再開以降、存在感が増す清水陽介。豪快なフォームから繰り出される直球と鋭く落ちるフォークが武器

クイック禁止、画像や映像を使って説明

 ストレートの威力を落としてしまうクイックモーションも禁止。当然、相手は盗塁を仕掛けてくるが、大島は「盗塁されてもいいから強いボールを投げろ。何かをしようとしたらリスクはつきもの」と絶対に許さなかった。

 そのかわり、牧田にノートパソコンを買わせ、投球フォームの画像を重ね合わせたり、動画を編集したディスクを渡した。それを見せながら「クイックを試みた時には頭が先に突っ込んでいる」「リリースポイントがこれだけ早くなっている」「だから球威が落ちる」と、丁寧に説明した。

 前述した佐野には「ドラフト上位指名でプロに入れる」と約束して獲得。強豪校出身ではなかったので「とにかく場数が必要」と4年間で全92試合中67試合も登板させ、リーグ最多記録の30勝(24敗)を挙げてドラフト2位で西武に送り出した。

実力者を送り出す関甲新学生野球の名付け親

 ちなみに関甲新学生野球では、平成国際大以外の大学からも多くのプロ野球選手たちを輩出している。上武大から井納翔一(DeNA)、安達了一(オリックス)、白鴎大から大山悠輔(阪神)、岡島豪郎(楽天)、新潟医療福祉大から笠原祥太郎(中日)ら個性豊かな面々がNPBで活躍をしているのだ。

 この要因について、関甲新学生野球連盟の名付け親(関東・甲信・新潟&新連盟の頭文字から命名)でもある大島監督は、中央球界との異なる特徴を挙げる。

「僕は『競争の中央』『育成の地方』と言っているんですけど、ポテンシャルを持った子を我慢強く起用していけるのが地方リーグの良いところだと思うんですよね。毎年、毎年鳴り物入りで選手が入ってくる中央球界の大学は“結果を残す子”が使われるわけです。その競争を勝ち残った子たちは必然とプロが近くなりますよね。一方で地方リーグは公式戦を通してポテンシャルある子をまとめていくイメージです」

 大島監督は、その育成力の要因として良好な環境があると語る。

「練習環境に恵まれている大学が多いですね。それなりの球場があって室内練習場があって野球に没頭できます。あと大きいのは“中央が身近にある”ことですね。東京に近いですから(物理的な)距離がありすぎない。東京六大学や東都、社会人の強豪とオープン戦もできますし、観に行くこともできる。だから中央球界になんとかして追いついていくという空気を作りやすいですよね」

【次ページ】 大きな道路を走らせないといけない

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