令和の野球探訪BACK NUMBER
地方大学からなぜ好選手が続々? サブマリン牧田を育てた監督が期待する「デカいエンジン」
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2020/09/29 10:00
リーグ再開以降、存在感が増す清水陽介。豪快なフォームから繰り出される直球と鋭く落ちるフォークが武器
大きな道路を走らせないといけない
では、清水の場合はそのような環境の中、いかにして成長してきたのか。学生時代は映画監督になりたかったというだけあって、大島監督は表現力はとても豊かで面白い。
「デカいエンジンの車で街中を走らせても仕方ないじゃないですか。電柱ぶつけちゃうかもしれないからって慎重にさせても、それじゃあ軽自動車と一緒になっちゃうし。大きな道路を走らせないといけないなって」
エンジンつまり馬力が豊富な清水の魅力をどう活かすか。そこに苦心したとここまでの3年半を振り返る。
清水は伊勢崎清明高校時代にエースにはなれなかった。大学では2年春から登板の機会を与えたが、試行錯誤の中で調子が上がらず、そこから長らく公式戦のマウンドから遠ざかっていた。
「結局ウチに来ている選手って、高校までに試合で活躍できていないんです。実績があったら東京六大学野球や東都大学野球に行っているわけですから。でも、もちろんポテンシャルがあるから獲っています。それなのに試合で活躍できないというのは練習の仕方とか技術についての考え方が足りないんです」
なぜ試合で活躍できないのか? そこを突き詰めて考えられることが飛躍への大きな分かれ道となる。「気持ちが弱いとか、メンタルで片付けるのは好きじゃないです」とも言う。
一生懸命やるが、こだわりが強い
清水の場合もそうだった。「自主練習は一生懸命やるし良い子なんです。でも、こと投手のことに対してはこだわりが強くて、それが上手い方向に向いていませんでした」と大島監督は昨季を回想した。
だが、新型コロナ禍による自粛期間が、清水にとって大きなきっかけとなった。