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なぜ監督はエースを降板させなかった?
仙台育英の“あり得ない起用”の真実。
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![田口元義](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/7/5/-/img_75003d1c8e96afbf93ce622c330de78e8574.jpg)
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2020/08/21 07:00
![なぜ監督はエースを降板させなかった?仙台育英の“あり得ない起用”の真実。<Number Web> photograph by Kyodo News](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/a/700/img_6a7115f17eaf331170537a43303fea07152370.jpg)
打席に立っても3打数2安打と好成績を残した、仙台育英のエース・向坂優太郎。
「そういう自分の姿を、後輩たちにも見せられたかな」
背番号「1」で夏を迎えた向坂にとって、甲子園交流試合は高校最後の大舞台である。だからこそ、須江は人間味のある采配でもって、チームの功労者であるエースに、できるだけ長くマウンドを託したかったのだろう。
須江がしみじみと話していた。
「センバツでベンチ入りさせる予定がなかった選手が、夏のメンバー入りを勝ち取ったりして……今年の3年生は年長者としての気概がありました。そのなかでも向坂は、『後輩を育てたい』という気持ちを持って頑張ってくれました」
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仙台育英の成長の「証」である向坂は、倉敷商戦で公式戦最多となる6失点を喫した。
だが、試合後の表情には充足感すらあった。
結果ではなく、歩みを誇る。そんな想いをにじませ、甲子園初登板を振り返っていた。
「マウンドでは『平常心』をテーマに投げてきて、夏は県大会、東北大会、甲子園でもブレずにできました。そういう自分の姿を、後輩たちにも見せられたかな、と思います」
監督の“あり得ない起用”に、エースは自らの姿勢を全うすることで応えた。
1試合限りの甲子園。仙台育英の指導者と選手の、深い信頼関係に触れた気がした。
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