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「悲壮感のない甲子園」を初めてみた。
もしかすると本当はこの形の方が……?

posted2020/08/22 08:00

 
「悲壮感のない甲子園」を初めてみた。もしかすると本当はこの形の方が……?<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

観客席がガランとしている分だけ拍手や手拍子はクリアに聞こえてきた。高校野球の原型を見た思いだ。

text by

安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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Naoya Sanuki

 少しモヤッとした感じの青空と、めまいがするような暑さと、時おりネット裏を吹き抜ける浜風と……いつもの年と変わらないものはいくつかあるけれど、やっぱりいつもの「甲子園」じゃない。

 ガランとした観客席は、いっぱいになれば4万7000の大観衆だから、かえってアルプスや外野スタンドの背の高さがうらめしい。

 グルッと眺め回すとバックスクリーンの横にカメラマンさんたちの三脚がズラリと見えて、一塁側、三塁側のダクアウトの横にも、カメラマンさんたちがファインダーに目を凝らしている。

 毎年のことだが、日除けも屋根も何もないカメラマンさんたちの定位置は、甲子園で一番過酷な仕事場だろう。

 50℃を超えるといわれるグラウンドからの輻射熱と、頭上からは炎熱の陽光が容赦なく照りつけて、グラウンドレベルでは風も吹かない。

 それだけじゃない。ファールボールの直撃を浴びて、時にはそのファールボールを追いかけてきた選手までが、勢い余って飛び込んでくる。

 カメラマンさんたちの商売道具は、ワンセット数百万と聞いたことがある。カメラマンさんたちは、そのたび、グラウンドの選手たち以上の敏捷性で、大切な“相棒”を身を挺して守るのだ。

記者席は少し広かった。

 ネット裏には、いつものように、ラジオ、テレビの放送席が設けられ、いつもは見たことのないアクリル板が、アナウンサーと解説者の席の間を遮断している。  

 常設の記者席は、新聞、放送の記者の方たちがいつものように使っているが、地方新聞の記者の方たちや、私たち雑誌の記者が使う「第二記者席」は、観客席の一部を使っているので、今年は「無観客」のぶん、ソーシャルディスタンスで広く使える。

【次ページ】 スカウトも、選手の家族にも人数制限。

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