マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
横浜隼人・水谷監督の見果てぬ夢。
花巻東に預けた息子・公省と甲子園で。
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![安倍昌彦](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/-/img_63c0172edf1a3eec5d5017836b5eb9301895.jpg)
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2020/07/16 07:00
![横浜隼人・水谷監督の見果てぬ夢。花巻東に預けた息子・公省と甲子園で。<Number Web> photograph by Kyodo News](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/5/700/img_6559c9d1d61fc926e7b086b3e0742532153871.jpg)
水谷公省は2019年夏に2年生4番として出場しながら、途中交代で花巻東も初戦敗退。誰よりも1年間の成長を甲子園で見たかったのは父かもしれない。
父は「見ても、何も言いません」。
「花巻東が2009年に、菊池雄星で甲子園に出た時です。長崎日大の大瀬良(大地、現・広島)と投げ合っていい試合をしていたのを見て、『高校は花巻東に行く!』って、もうその頃から言ってましたから。ええ、僕がすすめたわけじゃありません。本人が小学生の時に、自分で決めて花巻に行きました」
水谷監督はいつも元気だ。
話のテンポが軽快で、語り口もいつも快活でハイテンション。
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試合が始まると、「1万点取ってこーい!」と、選手たちを鼓舞する。
「でも一度も見たことないんです、アイツが野球やってるとこ。去年の甲子園も見てないし、練習試合も組むことは組むんですが、去年の夏は花巻が甲子園に出て中止、この春はコロナで中止。たまにこっちに帰ってきた時に、素振りを見るぐらいで。
見ても、何も言いません。指導の邪魔になりますから。まあまあ振れるようになってきたかなぁって思うぐらいですかね」
プロ注目の投手たちが相手でも。
この日花巻東が対戦したのは、秋田の強豪・ノースアジア大明桜高。今年のチームは、橘高康太、長尾光、佐々木湧生とプロ注目の3人の快腕を擁して、打者にとっては攻略困難なはずだった。
しかし花巻東・水谷公省は、次々に登板する明桜投手陣をまったく苦にせずに、自分本来のスイングを繰り返しているように見えた。
スライダーかチェンジアップの落ち際を、バットヘッドで拾うようにしてセンター前に運んだ第1打席。
ややタイミングを外されながらもヘッドアップせずに顔がボールについていくのは、体の開きがなく、ヒザと足首が柔軟に反応していたから。そうやって、とっさに全身が反応できるのは、より高いレベルで野球ができるための必須条件だ。
センターのスーパーキャッチに阻まれた右中間深い位置へのライナーが惜しかった。2回目の打席だ。
基本、ローボールヒッターのスイング軌道だから、高めのカーブをわずかにこすったように打って、打球の伸びがあと一歩足りなかったか。