令和の野球探訪BACK NUMBER
ドラフト候補右腕、加藤翼が急成長。
「ユウキさん」の指導とエース争い。
posted2020/07/22 11:40
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
Yu Takagi
岐阜県中南部の可児(かに)市にある帝京大可児高校。中京高(現中京大中京)、名城大、シダックスでプレーした田口聖記監督のもとで強化を進め、甲子園出場こそないものの県内の有力校として認知度も上がってきた。
そして今年、多くのNPB球団スカウトが最速153キロ右腕・加藤翼の視察に多く足を運んでいる。
「素晴らしい素材を持っているので、あとは精度。力の伝え方も上手く、体ができてきたらどうなっていくんだろうと楽しみでもあります」(DeNA・中川大志スカウト)
「カーブも良いですし、ストレートがベース上にきても垂れません。角度もあってシュート回転もしないので左打者も苦にしなさそうです」(オリックス・谷口悦司スカウト)
好素材として評価される加藤だが、中学時代は目立つ存在ではなかった。所属していた岐阜可茂ボーイズにでは、県選抜入りこそ果たしているが、チームも勝ち進むことはできず、入学前の球速は最速でも120キロ台後半。
そんな右腕が2年半弱の時を経て、ここまでの急成長を果たした要因には、NPBを経験したコーチとライバルの存在があった。
ヤクルトなどで活躍した田中祐貴。
「一番はユウキさんの指導ですね。色々と話し合いながらどんど自分を変えていきました」
加藤が「ユウキさん」と慕うのは、同校の田中祐貴総合コーチだ。近鉄やオリックス、ヤクルトで「ユウキ」の登録名で投手としてプレーし、ヤクルト時代の2009年には先発ローテーションの一角も務めた。'10年に現役を引退、その後はジムを経営する傍らで同校のコーチを'17年から務めている。
豊川高校(愛知)監督時代に、森福允彦(元ソフトバンク、巨人)を擁して夏の愛知大会2年連続準優勝を果たしている田口監督だが「投手に関しては全面的に任せています」と田中コーチに裁量を与えている。