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勇気をもって最後方からつなごう。
在ドイツ日本人GKコーチの知見。

posted2020/06/14 08:00

 
勇気をもって最後方からつなごう。在ドイツ日本人GKコーチの知見。<Number Web> photograph by Getty Images

シュツットガルトの正GKを務めるコベル。彼らのビルドアップを見るだけでも学べることは多い。

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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「試合で勝つことも喜びですが、やっぱり、選手の成長が目に見えてわかるので、それがすごく楽しいです」

 育成GKコーチとしての魅力についてそう話すのは、日本代表の遠藤航が所属するVfBシュツットガルト(以下VfB)でU14 、U15年代を指導する松岡裕三郎だ。キーパー大国のドイツでGKを指導する日本人である。

 GKがフィールドプレーヤーと異なる特別なポジションであるのと同様に、GKコーチは指導者のなかで特別な立ち位置にいる。チーム練習とは別にGKをトレーニングしながら、チームに順応するように導いていくわけだが、GKへの理解が深いドイツではGKに対する指摘も厳しく、当然GKコーチへの要求も高い。

 VfBは多くの代表選手を育ててきたクラブとして、ドイツ国内で高い評価を受けている。そんなクラブで松岡は、どのような経緯でGKコーチのポジションについたのだろうか。

 同志社大学を卒業後にドイツへ渡った松岡は、幾つかのクラブを渡り歩いた後で、シュツットガルト・キッカーズ(以下キッカーズ)へ辿り着いた。キッカーズは元ドイツ代表で日本でも活躍したギド・ブッフバルトの古巣で、1988-89、1991-92シーズンにはブンデスリーガにも所属していたこともある古豪(現在は5部リーグに所属)だ。

育成年代で得たひとつのきっかけ。

 そんなキッカーズでU15、U16の選手たちを指導していて、ひとつのきっかけと出会うことになった。

 2017年、ドイツサッカー協会主催の、育成アカデミー(NLZ)を所有するクラブの代表GKコーチが集うミーティングがあったのだが、キッカーズで行くはずだった人物が所用で行けなくなり、代理として松岡が参加することになった。

 そのときにVfBの育成GKのコーディネーターと知り合い、連絡先を交換したそうだ。そもそも松岡はVfBのスクールでGKコーチをやっていた縁があり、U11やU13コーチとも知り合いではあった。だからといって、すぐにチャンスが来たりはしない。

「コーディネーターに自分から電話して『U15のコーチがいなくなると聞いたんですが、入れませんか?』と尋ねてみたんですが、『いまのところ空いてない。GKコーチは残る』と言われて。やっぱりダメかと思っていたんです」

【次ページ】 ギリギリの瀬戸際での採用。

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