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勇気をもって最後方からつなごう。
在ドイツ日本人GKコーチの知見。
posted2020/06/14 08:00
![勇気をもって最後方からつなごう。在ドイツ日本人GKコーチの知見。<Number Web> photograph by Getty Images](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/8/5/1500wm/img_8592ef58bd68f331485b7dcc5cb1c774376767.jpg)
シュツットガルトの正GKを務めるコベル。彼らのビルドアップを見るだけでも学べることは多い。
text by
![中野吉之伴](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/-/img_63c0172edf1a3eec5d5017836b5eb9301895.jpg)
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
「試合で勝つことも喜びですが、やっぱり、選手の成長が目に見えてわかるので、それがすごく楽しいです」
育成GKコーチとしての魅力についてそう話すのは、日本代表の遠藤航が所属するVfBシュツットガルト(以下VfB)でU14 、U15年代を指導する松岡裕三郎だ。キーパー大国のドイツでGKを指導する日本人である。
GKがフィールドプレーヤーと異なる特別なポジションであるのと同様に、GKコーチは指導者のなかで特別な立ち位置にいる。チーム練習とは別にGKをトレーニングしながら、チームに順応するように導いていくわけだが、GKへの理解が深いドイツではGKに対する指摘も厳しく、当然GKコーチへの要求も高い。
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VfBは多くの代表選手を育ててきたクラブとして、ドイツ国内で高い評価を受けている。そんなクラブで松岡は、どのような経緯でGKコーチのポジションについたのだろうか。
同志社大学を卒業後にドイツへ渡った松岡は、幾つかのクラブを渡り歩いた後で、シュツットガルト・キッカーズ(以下キッカーズ)へ辿り着いた。キッカーズは元ドイツ代表で日本でも活躍したギド・ブッフバルトの古巣で、1988-89、1991-92シーズンにはブンデスリーガにも所属していたこともある古豪(現在は5部リーグに所属)だ。
育成年代で得たひとつのきっかけ。
そんなキッカーズでU15、U16の選手たちを指導していて、ひとつのきっかけと出会うことになった。
2017年、ドイツサッカー協会主催の、育成アカデミー(NLZ)を所有するクラブの代表GKコーチが集うミーティングがあったのだが、キッカーズで行くはずだった人物が所用で行けなくなり、代理として松岡が参加することになった。
そのときにVfBの育成GKのコーディネーターと知り合い、連絡先を交換したそうだ。そもそも松岡はVfBのスクールでGKコーチをやっていた縁があり、U11やU13コーチとも知り合いではあった。だからといって、すぐにチャンスが来たりはしない。
「コーディネーターに自分から電話して『U15のコーチがいなくなると聞いたんですが、入れませんか?』と尋ねてみたんですが、『いまのところ空いてない。GKコーチは残る』と言われて。やっぱりダメかと思っていたんです」