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日本人指導者の欧州挑戦に朗報?
ベルギーで画期的な監督人事とは。
posted2020/06/14 11:40
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
STVV
海の向こうで、画期的な監督人事が行なわれた。
6月5日、ベルギーリーグ1部のシント・トロイデンVV(STVV)が、テクニカル・アドバイザーを務めていたオーストラリア人のケヴィン・マスカットの監督就任を発表したのだ。
日本サッカー界とは一見、なんの関係もないように思えるこのニュース。しかし、実はこれ、日本人監督の可能性を大きく高める出来事なのだ。
なぜ、オーストラリア人監督の去就が、日本人監督の未来に関係するのか――。
1989年にオーストラリアでプロキャリアをスタートさせたマスカットは、'96年からイギリスに渡ってクリスタル・パレスやグラスゴー・レンジャーズなどで10年間プレーしたのち、母国に戻って2012年にスパイクを置いた。
その後、古巣のメルボルン・ビクトリーのコーチに就任するのだが、このとき監督を務めていたのが、現在横浜F・マリノスを率いるアンジェ・ポステコグルー監督だった。
“アンジェの右腕”を立石CEOが招聘。
ポステコグルー監督が'13年10月にオーストラリア代表監督に選ばれると、後任としてメルボルン・ビクトリーを率いてリーグ優勝を達成し、アジア・チャンピオンズリーグには'14年、'16年、'18年、'19年と4度出場した。
そんな指揮官の手腕に注目したのが、STVVの立石敬之CEOだった。20年1月、マスカットをテクニカル・アドバイザーとして招聘するのだ。
「メルボルンで彼は本田圭佑やデル・ピエロとも一緒に仕事をしています。非常に攻撃的なサッカーをやっていて良い監督だなと。アンジェの影響も受けていると思います。だから、もともとは監督をやってもらいたかったんです」
STVVは19年11月にマーク・ブライス監督を解任した。12月は元コーチが暫定的に指揮を執り、20年1月に新監督を招聘。だが、その人物はスロベニア人のミロス・コスティッチで、立石CEOが見込んだマスカットはテクニカル・アドバイザーに就く。