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勇気をもって最後方からつなごう。
在ドイツ日本人GKコーチの知見。 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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posted2020/06/14 08:00

勇気をもって最後方からつなごう。在ドイツ日本人GKコーチの知見。<Number Web> photograph by Getty Images

シュツットガルトの正GKを務めるコベル。彼らのビルドアップを見るだけでも学べることは多い。

ゴールを守ることが何より大事。

 VfBとは2018年7月1日から契約を結び、U14、U15のGKコーチとして活動するなか、フルに稼働できる喜びを感じている。契約上は試合の帯同に関してはホームでの試合のみとなっているようだが、松岡は頻繁にアウェーの試合にも帯同しているという。

 その他にも自分の担当より下の年代のスカウティングをするため、コーディネーターと一緒に試合を観に行ったり、地域トレセンにも顔を出したり。他の年代を担当するGKコーチと時間を忘れてサッカー談義ができる環境の素晴らしさを満喫している。

 GKへの指導についても尋ねてみた。

 GKにとって何より大事なのはゴールを守ること。その点については松岡も強調している。一方で攻撃を組み立てる起点としても重要視されてきている現代のサッカーでは、GKにもパスの能力や攻撃に関わる姿勢が求められている。ただし、選手によって特徴は異なり、チーム事情によって求められるGK像も変わってくる。

「もちろん強いチームに行けば行くほど、ボールを止める技術と足元の技術、その両方が求められます。トップクラブになれば、カウンターを受けたときでもしっかり防がないといけない。

 とはいえ、VfBではどちらもできるGKはあんまりいません。止められるGKはいたんですが。1部にいたときは降格か残留かというポジションにいたので、そうなるとビルドアップよりもまずボールを止めるところを重視するのかなと思います」

「勇気をもってGKからつないで」

 成人チームにおいて、GKがどのようにチーム戦術と絡むかは監督によって変わってくる。それでもやはり、育成中にビルドアップへの関わり方やパス出しの仕方を経験しておいた方がいいのではないだろうか。そう尋ねると、松岡は熱を帯びて語りだした。

「100%しておいた方がいいと思います。ボールをクリアするのは大人になってからでも簡単にできます。でも、大人になってから正しいポジショニングを取ってパスをつなごうと思うと、相当な時間がかかります。子どものうちからビルドアップにGKが関わった方がいいですね。

 去年、一昨年と日本で『全日本U-12サッカー選手権大会』を見たんですが、ほとんどのGKがボールを持ったらロングボールを蹴っていました。高校サッカーもそういう傾向がある かと思います。もちろん遠くに蹴ることも大事で、状況次第ではそうした判断も大事ですけど、それがあまりにも多すぎる印象です。

 もっと勇気をもってGKからつないでほしい。そういうのをやらないと、GKの成長にもつながらない。現代的GKを生むためにも、試合でそういったプレーにチャレンジさせてあげないと。小学生の全国大会レベルのGKでロングボールばっかりだったというのは、残念でした」

【次ページ】 ある試合ではGKが66回もパス。

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