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勇気をもって最後方からつなごう。
在ドイツ日本人GKコーチの知見。 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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photograph byGetty Images

posted2020/06/14 08:00

勇気をもって最後方からつなごう。在ドイツ日本人GKコーチの知見。<Number Web> photograph by Getty Images

シュツットガルトの正GKを務めるコベル。彼らのビルドアップを見るだけでも学べることは多い。

ある試合ではGKが66回もパス。

 試合でGKがつなごうとするとミスの危険が増える。だから、そうしたプレーを嫌がる指導者もいる。勝つために必要なプレーだと主張する人もいるだろう。だが、育成の間はそうしたミスこそが大事ではないかと松岡は言う。

「例えば、うちのU15がシャルケと練習試合をしたときの話ですが、35分ハーフ計70分のゲームでGKのパス回数が66回あったんです。試合には負けたし、GKもビルドアップでミスをして失点というシーンもありました。でもその選手の成長のことを考えたらすごくいい試合だったと思うんです。

 シャルケの選手たちが休むことなくGKにプレッシャーをかけてくるなかでのプレーですよ。ハイプレッシャーのなかでパスを選択するのはすごく難しいですよね。自分のミスから失点したので本人は泣いてましたけど、でもだからこそ、この66本というパスは、うちのGKにとってはすごくいい経験になったと思うんですね。

 小さいときからそういうミスをするかもしれないというプレッシャーを受けていても、それでも蹴り出さずにパスをつなぐ、求められるプレーができるようにチャレンジするというのは、すごく大事なことだと思います」

 育成GKコーチである松岡は、選手たちのチャレンジをがっしりと受け止めて、どこを修正すればいいのか、そのためにどんなトレーニングをすればいいのか、日々向き合って指導している。

 コミュニケーションを取りながら、プレッシャーを受ける試合のなかでも選手が自信を持ってプレーを選択し、それをミスなくできるように、ともに戦っている。その積み重ねが、選手を羽ばたかせる大事な礎になると信じて。

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