熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
ポンテが語る中島翔哉や久保建英、
安部裕葵、堂安律の「素晴らしさ」。
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byRobson Ponte
posted2020/06/04 11:50
現在はポルティモネンセの経営に携わるポンテ(中央)。まごうことなき浦和のレジェンドだ。
カタール移籍の経緯については?
――パリ・サンジェルマン、ドルトムント、ポルトガルの3大クラブなど錚々たるクラブからオファーがあったようですが、2019年2月、推定3500万ユーロ(約42億円)という日本フットボール史上最高額の移籍金でアル・ドゥハイル(カタール)に入団します。これには、「キャリア上、退歩ではないか」という声もありました。
「クラブが彼に移籍を強要した、などということは全くない。本人は年俸が数倍になり、クラブには多額の移籍金が入る。プロとして当然の選択だった」
――しかし5カ月後、中島はポルトへ移籍します。何があったのでしょうか?
「カタールリーグは観衆が少なく、選手が高いモチベーションを維持するのは容易ではない。家族を含め、生活面での適応も難しかったようだ。
ポルトという世界有数のクラブでプレーする機会を得たのだから、良かったんじゃないのかな」
――権田、安西のクラブでの状況は?
「当初、権田は第2GKという位置づけだった。しかし今季途中から正守護神の座をつかんだ。家族共々ここでの生活にすっかり馴染み、家を購入している(笑)。
安西は、移籍直後からずっとレギュラー。攻守両面で成長し、昨年9月のポルト戦で強烈なミドルシュートを叩き込んで話題を集めた。今後、さらに伸びる選手だ」
日本とポルトガルは共通点がある。
――クラブの用具サプライヤーがミズノで、日本企業3社がスポンサーに名を連ねています。
「我々のような地方クラブにとって、財政面の安定は死活的に重要だ。日本選手が活躍することで、日本企業からののサポートが得られる。今後も、日本とは良好な関係を保ちたい」
――ベルギー1部のシント・トロイデンは、2017年に日本企業が経営権を取得。多くの日本企業がスポンサーとなり、多数の日本人選手を獲得しています。(※かつてDF冨安健洋、FW鎌田大地、MF遠藤航らがプレーし、現在も前鹿島のFW鈴木優磨ら4選手が在籍する)。このクラブのことをどう見ていますか?
「彼らは、少し我々の真似をしているのかな(笑)。でも、特に意識はしていないよ」
――ポルトガルは人口1000万人ほどの小国でありながら、古くはエウゼビオ、近年ではフィーゴ、そしてクリスティアーノ・ロナウド(現ユベントス)ら世界的名手を輩出し、現在の欧州王者でもある(※2016年、欧州選手権で優勝)。なぜこんな小さな国がこれほど偉大な結果を残せるのでしょうか?
「ポルトガル人は欧州では最も小柄な部類に入るが、テクニックを磨き、柔軟な思考を持つ一方で、監督が目指す戦術を忠実に遂行する。彼らのフットボールへの情熱は、ブラジル人に優るとも劣らない。
選手が小柄でテクニックを重視するなど、日本と共通点が多い。日本は、もっとポルトガルのフットボールを参考にした方がいいんじゃないかな(笑)」
――ポルトガルの新型コロナウイルスの感染状況とリーグ再開の見通しは?
「ヨーロッパでは比較的、感染が抑えられた国の1つ(※6月初めの時点で、感染者が約3万3000人、死者が約1400人)。
リーグは昨年8月に始まり、3月6日の第24節(全34節)終了時点で中断されたが、5月初めからチーム練習を始め、6月3日からリーグが再開される。フットボールがある日常が戻ってきて、とても嬉しいよ」