熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
カズのブラジル初ゴールを目撃した
唯一の日本人記者、色褪せぬ記憶。
posted2020/06/03 11:50
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Hiroaki Sawada
2020シーズンでプロ35年目を迎えた、カズこと三浦知良。彼がプロフットボーラーとして第一歩を踏み出したのはサッカー王国ブラジルであるのは誰もが知るところだろう。ではカズは実際、現地でどのようなプレーを見せていたのか?
7月4日のJ1再開を前に、その奮闘を実際に目撃していたブラジル在住のライター沢田啓明氏に全5回シリーズで記してもらった。第1回はカズにとってのプロ初ゴール、その取材の記憶。
7月4日のJ1再開を前に、その奮闘を実際に目撃していたブラジル在住のライター沢田啓明氏に全5回シリーズで記してもらった。第1回はカズにとってのプロ初ゴール、その取材の記憶。
1988年3月中旬の昼下がり。当時、僕が働いていたサンパウロの日本語新聞社の編集部に電話がかかってきた。
「今度の土曜日、息子がコリンチャンス戦に出るんだ。車を出すから、一緒に行かないか」
聞き覚えのある、だみ声。15歳でブラジルへ渡り、2年前、19歳になる直前に念願のプロ選手となって地方クラブで経験を積み、サンパウロ州内の小クラブへ移籍した若者の父親だった。
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親子とは何度か会っていた。息子の名は、カズこと三浦知良。父親は納谷宣雄。
「(リオの)マラカナン・スタジアムでプレーすること、日本代表に入ってワールドカップ(W杯)に出場すること。この2つが夢です」と話していた。21歳になったばかりで、ほっそりとしていた。
「行きます。一緒に連れて行ってください」と即答した。
左ウイングのチャンスメーカー。
土曜の試合はサンパウロ州選手権の第5節で、カズが所属するキンゼ・デ・ジャウー(以下、キンゼ)は2勝2分と好調だった。
彼は左ウイングのレギュラーでチャンスメーカーとして活躍していた。
しかし過去2年間もそうだったが、アシストは多いものの得点がない。
彼が出場した試合のほとんどを取材していたサンパウロ在住のカメラマン、西山幸之さんは「シュートできる場面でも、パスを出してしまう。日本人特有の遠慮なのかな。早く点を取れよ、と言うと、いつも『次は必ず取ります』と答える。でも、またシュートしないでパスを出すんだ」と嘆いていた。