野球のぼせもんBACK NUMBER
2020年は”B千賀”にきっと驚く。
「すべてを捨てて、新しい投球を」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2020/05/14 07:00
キャンプでも当初はノースロー調整が続いたが現在は「ブルペンに入ろうと思えば入れる」ところまで回復した千賀。
社会問題にも積極的に発言。
また、4月からインスタグラムを始めた。自身の投球動作の映像を載せたり、他球団の選手との交流も行ったりと楽しんでいる。ただ、これは自己満足やただのファンサービスのためだけに始めたのではなかった。
「チャリティー活動をしようと思い、それをたくさんの人に知ってもらうため、輪を広げていくために始めたんです」
昨シーズンから子ども虐待防止を訴えるオレンジリボン運動に賛同して成績連動型寄付活動を行っているが、それとは別に、今回は福岡市内の児童福祉施設や里親家庭などで暮らしている子どもたちを対象とした子どもたちへの支援を始めたのだ。
「新型コロナウイルスの影響で大変な日々が続いていますし、その中で休校や外出自粛の長期化により、子どもたちの虐待のリスクが増えているというニュースを耳にしました。ステイホームと言われている中でも、家に居づらい子供や、家で勉強をしたくても出来ない状況の子どもがたくさんいると聞き、このようなプロジェクトを立ち上げることにしました」
目の前にある時間を無駄にしない。
5月8日にチームの盟友である甲斐拓也と共に活動を開始。課題を多くの人に知ってもらい、支援の輪を広げたいとの思いからクラウドファンディングを始めた。その開始前に事務局の関係者は「目標額を設定したけど、このご時世ですから達成できるかどうか」と弱音を漏らしていたが、なんと開始2時間半で最低目標にしていた200万円を突破してしまった。このプロジェクト自体は今月22日まで行われており、引き続きサポートを募っている。また、自身が購入したマスク4万枚を福岡市内の医療機関などへ寄付した。
「あとで振り返った時、良い時間の使い方だったなと思える期間にするかしないかは自分次第。やれることは限られているけど、何か出来る時間も今はあるわけですから」
プレイボールを待ちながら――千賀は目の前にある時間を無駄にせず過ごしている。何もアクションをせずに後悔するのは、彼の生き方には似合わない。