野球のぼせもんBACK NUMBER
2020年は”B千賀”にきっと驚く。
「すべてを捨てて、新しい投球を」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2020/05/14 07:00
キャンプでも当初はノースロー調整が続いたが現在は「ブルペンに入ろうと思えば入れる」ところまで回復した千賀。
軸足に体重を「乗せすぎない」。
あまりに大胆な決断だ。しかし、千賀のプロ野球人生を振り返ると納得できる部分もある。彼は極端なことに常にチャレンジして、これまで多大なる成功を収めてきた。
毎年1月はプロ1年目のオフからアスリートコンサルタントの鴻江寿治氏が主宰する自主トレ合宿に欠かさず参加。鴻江氏の提唱する「うで体」「あし体」の理論に沿って、投球フォームの基盤を作り上げてきた。
千賀は後者のタイプだ。あし体は骨盤の形状により体の左半身の方が強く、右半身の方が弱いとされる。そのため右投手の場合は、軸となる右脚に体重を溜めすぎるとかえって体の弱い部分を使うのでパフォーマンスの低下や故障につながるという考え方になる。
ごく一般的な投手指導においては「軸に体重をしっかり乗せろ」と言われる。だが、千賀のタイプはそれに当てはまらないというわけだ。千賀もはじめの頃は戸惑いを見せたが、すぐに自身のボールの変化が彼に自信をつけさせた。球界の常識に流されることなくフォームづくりを行ってきたこと。育成枠から大化けした背景はそこにあった。
ダルビッシュとともに筋肥大を目指す。
また、近年はダルビッシュ有の理論に大いに共感し、オフ期間には合同トレーニングを行うためにアメリカに渡って時間を共にしている。例えば走り込みの是非がたびたび議論になる中で千賀は「走らない」ことを選択し、筋肥大のトレーニングも賛否はあるが積極的に行ってきた。
「やりもしないで反対というのは、僕は違うと思う。何事もやってみるのが大切だと思う」
一部週刊誌ではメジャー行きを意識した言動などと書かれてひどく悲しんでいた。もっと上手くなりたい、もっと上の世界をという好奇心や向上心を否定されたような気持ちだったのだろう。