野球のぼせもんBACK NUMBER
2020年は”B千賀”にきっと驚く。
「すべてを捨てて、新しい投球を」
posted2020/05/14 07:00
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kyodo News
連続メッセージ「プレイボールを待ちながら」――発売中の雑誌「Number」1002号に寄せられた現役プロ野球選手たちのメッセージ。その中でホークスの千賀滉大が届けてくれた声を筆者が形にして寄稿した。
記事の見出しは「無観客にはクエスチョン」。
意思が明確に伝わってくる文言だ。だが、同じページの吉田正尚(バファローズ)は「思いっきり振ればいい」、対向誌面の鈴木誠也(カープ)が「飼い始めた愛犬と」で、近本光司(タイガース)は「コーヒーで成功体験」と、どうも鷹のエースの発言だけ毛色が違う。
また、無観客でのシーズン開幕は現実味を帯びている。
4月23日に行われた日本野球機構(NPB)とJリーグによる「新型コロナウイルス対策連絡会議」の第6回会合の段階で、専門家チームから【緊急事態宣言解除後も最初は無観客での実施が妥当】との提言を受けており、それを踏まえてNPBの斉藤惇コミッショナーは記者会見で「とにかく野球をやり、テレビやネットなどを通して(家庭で)見ていただきたい。まずはお客さんを入れないでやることに12球団で反対はない」と明言した。
となれば、千賀の主張はそれに反旗を翻したようにも映る。どこか穏やかでない印象を抱いた読者もいたかもしれない。ただ、彼は異議を申し立てたいわけではなかった。このインタビューはその会議以前に行ったものだ。その時点ではまだ「無観客ありき」の世論ではなかった。
千賀が口にした“そもそも論”。
「野球選手である前に、一般社会のひとりの人間として考えると……」
電話口の向こうで彼は、そんな前置きを何度もしながら言葉を継いだ。
「このような世の中の状況で、僕らがいま野球の練習をする必要があるのかと問われれば、正直分かりません。ただ、結局は何かに怯えている状況でプロ野球って始まるんですかね。無観客ならば可能かもしれないけど、(4月中旬時点で)無観客はないのかなと思っています。ただ僕の考えは無観客ということ以前に、こんな状況で野球をやれるのかという“そもそも論”なので」