松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
加納慎太郎が車いすフェンシングと
ヤフー入社までを松岡修造に語る。
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph byNanae Suzuki
posted2020/05/05 08:00
車いすフェンシングの練習場での加納慎太郎。ヤフーで働くサラリーマンでもある。
転機は山本篤との出会いから。
松岡「東京までの道しるべはどう考えていたんですか」
加納「あくまでも照準は東京に絞っていたので、始めた時点でまだ7年はあると。そこまで着実に実力を積み上げていこうと考えてました」
松岡「でも、お金の問題があるじゃないですか。今はヤフーという立派な会社からサポートを受ける立場ですけど、学校に通っていて仕事をしていなかったわけですよね」
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加納「そうですね。最初は義足を作っている会社などにサポートをお願いしたり、相談したりしてました。それで義足の学校が熊本にあるんですけど、僕が熊本県の強化指定選手に選ばれたんですね。そのカリキュラムの一環で、パラアスリートの講演に参加できることになった。その講演に来ていたのが、パラ陸上で大活躍している山本篤さん。最後に質問コーナーがあって、僕が手を挙げたんです」
「うちは甘やかさないから」と言われて入社。
松岡「それが転機になるんですね。山本選手に何を聞いたんですか」
加納「山本さんも義足の学校に通っていて、競技を続けてきました。じつは僕も同じ状況で、すごく悩んでいますと。ちょうど卒業を控えた時期で、義足を作る仕事に就くべきか、それとも競技者になるべきか、アドバイスをいただけませんかと。そうしたら、山本さんが『絶対に競技をやるべきだ』って。山本さんが為末大さんと共同経営されているmemeという人材派遣会社があって、そこでヤフーを紹介してもらったんです」
松岡「すごい出会いですね。山本さんはまさに恩人というわけだ。そこで手を挙げたことで、人生がまた大きく動き出した。でも、ヤフーって誰もが知る大手じゃないですか」
加納「何社か面接を受けたんですけど、その1つがヤフーでした。そこでの受け答えとか、面接での空気感が、まるでフェンシングと出会ったときのようにしっくりきた。『うちは甘やかさないから、セカンドキャリアのことも考えて競技も仕事も全力でやってもらいます』と言われて、ある意味それが嬉しかったです」