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東京五輪、1年程度の延期決定……。
今、これだけは伝えておきたいこと。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byYONHAP NEWS/AFLO

posted2020/03/25 17:00

東京五輪、1年程度の延期決定……。今、これだけは伝えておきたいこと。<Number Web> photograph by YONHAP NEWS/AFLO

すくなくとも五輪開催中止にならなくて良かったとするべきか……。

なぜ2年延期ではなく1年延期が良いか。

「そのとき最も強い選手、優れた選手を選ぶべき」という観点から、あらためて選考した方がよいとする向きもあるかもしれない。

 だが、2年延期ではなく、1年延期して開催することの最大のメリットは、2020年を目指してきた選手が、そのまま挑んでいける余地が大きい点にほかならない。

 あくまでも、新型コロナウィルス感染拡大を避けて先に延ばしただけなのだ、という立ち位置からスタートすることが、大きな混乱を生まずに済む最善手ではないか。

 とはいえ、アスリートにとっての1年はとてつもなく大きい。

 東京での開催ということで、競技生活を続行し故障などを抱えつつ進んできたベテランたちがいる。

 スポーツクライミングですでに代表選手として内定している野口啓代のように、東京五輪を引退の場として表明していた選手もいるほどだ。

「大好きな競技生活を1日でも長く過ごせることをポジティブにとらえる」(野口)

 その一方で、「簡単には整理がつかないというのが正直なところ」(野口)とも心中を明かしている。

とにかく最小限の変更で開催を。

 選手は、本番の舞台から逆算して行動している。

 ターゲットを決めて、そこからさかのぼる形で練習計画を作り、進んでいく。

 ターゲットがずれることでやり直しを強いられるのは精神的にもきついし、おそらく競技人生そのものを大きく左右することにもなる。

 どれだけ「延期」という対応を取り繕っても、そういうしんどさは選手にとって間違いなく残るのだ。もう一度気力をあらためて奮い立たせるのに、信じられないほどのエネルギーを要することもあるだろう。

 先に記したことと重なるが、それでも、国際大会のスケジュールから有力な選択肢の1つとされていた「2年延期」ではなく「1年延期」としたことは、さまざまな条件の最小限の変更で大会が開けるようになったことを意味している。

 シビアな時間は続く――それでもきっと選手たちは、新たな「東京2020」を大きな目標として進んでいけるはずだ。

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