濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
道場マッチに後楽園、路上プロレス。
マット界の無観客試合は多種多様。
posted2020/03/12 20:30
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
このままではどこかの団体が潰れてもおかしくない。そんな危機感が確かにある。
新型コロナウィルスによる自粛要請、自粛ムードが長引き、それだけプロレス界でも興行の延期、中止が相次いでいる。充分に対策を打ち出した上で開催する団体もあるのだが、自治体が運営にかかわる施設も多いだけに「やりたくても会場がやらせてくれない」ということも。
団体経営だけでなく、選手のモチベーションやコンディションにも影響がある。観客の拍手と歓声がレスラーのエネルギー源なのだ。
業界でいち早く興行自粛を発表したのは、女子団体スターダム。政府の自粛要請を受け、DDTもそれに続いた。
「何もしないのはファンに申し訳ない」
とはいえ、転んでもただでは起きないのがDDTである。
「何もしないというのはプロレスファン、DDTの試合を楽しみにしてくれた人たちに申し訳ない」と語ったのは社長の高木三四郎。
DDTおよび同系列の東京女子プロレスは、都内の道場で無観客試合を実施。その模様を映像配信サービスDDT UNIVERSEで生中継している。
現場で見ているのはスタッフとマスコミ数人だけという状況だが、路上プロレスなどいかなるシチュエーションにも対応してみせるのがDDTの選手たちだ。
カメラを意識しながら“無観客試合の面白さ”を見事に成立させた。カメラを意識するというのは、つまりその向こうにいるファンの存在を信じるということだ。男色ディーノは巧みに画面から姿を消し、遠くから聞こえる悲鳴で“惨劇”を演出してみせた。