“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
武田英寿が浦和レッズを選んだ理由。
「長谷部さんも苦しんだと聞いた」
posted2020/02/20 08:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
「オファーが来た時に迷いは一切ありませんでした。すぐに決めました」
浦和レッズの高卒ルーキー武田英寿は、覚悟を持って赤いユニフォームに袖を通した。長年過ごしてきた東北を離れ、J1のビッグクラブで新たな人生をスタートする。
青森山田高校では、高2で選手権優勝を経験。最高学年となった昨年はキャプテンとして10番を背負い、高円宮杯プレミアリーグ優勝、選手権準優勝。高校生活で輝かしい結果を残し、まさに“鳴り物入り”で浦和にやってきた。
浦和の高体連出身のルーキーは作陽高校から加入した伊藤涼太郎(今季から浦和に復帰)以来、実に4年ぶりのこと。その前となると、2011年加入の小島秀仁(前橋育英高、現ジェフユナイテッド千葉)、2005年加入の細貝萌(前橋育英高、現バンコク・ユナイテッドFC/タイ)と赤星貴文(藤枝東高、元アレマ・インドネシアFC/インドネシア)まで遡らないといけない。
裏を返せば、下部組織からの昇格がメインの浦和が高体連出身の選手を獲得に動いたということは、喉から手が出るほど欲しい存在だったということだろう。
熱心なオファーに芽生えた覚悟。
武田に対する浦和の動きは、とにかく熱心で早かった。
青森山田の試合会場には常に浦和スカウトが足を運び、試合後は必ずと言っていいほど話し込む様子を見てきた。高いテクニックを誇り、身長も178cmと空中戦にも強さを発揮できるレフティーに多くのクラブが興味を示したが、「ウチが獲る」という浦和の意思は、他クラブを狼狽させるほど凄まじいものだった。
その動きは当然、武田自身も感じ取っていた。そして、同時にプロの舞台で厳しい競争が待っていることも――。
「レッズに高体連から入った選手が少ないということは知っています。それだけ厳しい世界だし、入団できたからといって、出番がすぐ来るわけではないことも知っています。でも、僕の中ではそこは一切関係ないんです。どのチームであろうが、一度この世界に入ってしまえば、周りから見ればプロサッカー選手であることは変わりありません。厳しい競争は必ずある。あくまで人は人、僕は僕なんです」