“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J1高卒ルーキー診断と戦略・後編。
浦和・武田英寿は開幕も狙える?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/02/15 11:45
浦和サポーターの期待も大きい武田。早くもキャンプで存在感を示している。
青森山田10番がキャンプで躍動。
<浦和レッズ>
MF武田英寿(青森山田)
昨季14位に沈んだ浦和レッズは、即戦力の獲得が急務だった。そのためか、新人選手の獲得は武田のみとなった。だが、高体連からの高卒ルーキーの獲得は今季復帰した伊藤涼太郎以来。さらに選手権を沸かせた青森山田の10番とあって、すでにサポーターからも話題を集めている。
戦術眼が高く、周りの状況を俯瞰で見ながら、正確な場所に左足のキックでボールを配ることができる司令塔タイプ。プレスバック、攻撃の組み立て、フィニッシャーと役割は幅広く、常に試合に関わり続けられる力も魅力だ。キャンプでは正確なキックでチャンスを演出するなど、頭角を現しており、レギュラー争いを活性化させている。
1999年シーズンのDF池田学以来、21年ぶりの「高卒ルーキーで開幕スタメン」も十分に狙える位置にいるだろう。
鳥栖はユース生のみ、湘南は若月が即移籍。
<サガン鳥栖>
GK板橋洋青、DF大畑歩夢、MF本田風智(鳥栖U-18)
残留争いに巻き込まれたサガン鳥栖は、選手の入れ替わりが激しいオフだった。新チームに向けて補強が着々と進む中、新卒選手は大学2人に加え、ユース昇格の3人となった。
U-18でエース格だった本田は、1.5列目の位置から裏のスペースに飛び込む動きが武器。フィニッシャーとしてだけでなく、オフ・ザ・ボールの動きの質も高い。左SBが主戦場の大畑は豊富な運動量をベースに、球際で激しさを発揮できる選手だ。GK板橋は185cmの高さを生かしたハイボール処理と、冷静な判断力がある。
彼らはひと足先にトップチームに昇格した同年代のMF松岡大起に大きな刺激を受けて、伸びてきた選手たちだ。3人とも足元の技術がしっかりとしており、U-18時代の恩師でもある金明輝監督がトップで指揮を執るだけに、“大抜擢”も見られるかもしれない。
<湘南ベルマーレ>
DF畑大雅(市立船橋)、FW若月大和(桐生第一)
鳥栖同様に入れ替わりが激しかった湘南ベルマーレは、2人の高卒選手と1人の大卒選手を獲得。しかし、即戦力候補と目されていたFW若月は1月にスイス・スーパーリーグのFCシオンにレンタル移籍が決まったため、キャンプには同行しなかった。
結果的に唯一の高卒ルーキーとなった畑は湘南のスタイルにマッチした選手だろう。4バックでは右SB、3バックではウィングバックが適正で、持ち前の爆発的なスピードでサイドを駆け上がる。正確なクロスを一層磨けば、1年目から試合に絡む可能性は十分にある。中核を担ってきた杉岡大暉が鹿島へ完全移籍しただけに、左サイドでの起用プランもあるだろう。
ライバルは両サイドをこなせる石原広教、新加入の馬渡和彰と強力だが、切磋琢磨しながら成長してほしい。