“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J1高卒ルーキー診断と戦略・後編。
浦和・武田英寿は開幕も狙える?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/02/15 11:45
浦和サポーターの期待も大きい武田。早くもキャンプで存在感を示している。
190cmの栗原イブラヒムジュニア。
<清水エスパルス>
DFノリエガ・エリック(清水ユース)、MF鈴木唯人(市立船橋)、FW川本梨誉(清水ユース)、FW栗原イブラヒムジュニア(三菱養和SCユース)
清水エスパルスは大卒ルーキーの補強は行わず、4人の高卒選手を獲得した。内訳はDF1人、MF1人、FW2人。
まずペルーからやってきたノリエガはもともとスピードとダイナミックな仕掛けが魅力のアタッカーだったが、182cmの高さを生かした強さを買われて昨季途中でCBにコンバート。ボランチやFWとどこでもこなせる器用さと身体能力を買われての昇格と言えよう。
同じくユースからの昇格となった川本も抜群の身体能力を誇り、あらゆるサイドのポジションで前への推進力発揮できる。また、市船からやってきた鈴木も技術レベルが高く、豊富な攻撃のアイデアを持ち、中盤のポジションならどこでもこなす。この3人は複数ポジションでの起用を考えながら、育てていくだろう。
その中でタイプが異なるのが、190cmの大型ストライカーである栗原だ。ガーナ人の父を持ち、しなやかな身のこなしとスプリント力、バネを駆使する。ポストプレーヤーとしてボールを集約し、そこから反転からのシュートは破壊力も抜群だ。FWはチームの大黒柱であったドウグラスが抜けただけに、彼のような破壊力とインパクトのあるストライカーが大きく成長できるか、注目したい。
4人に共通するのは、それぞれ高い向上心を持っているということだ。ノリエガは異国の地から来日し、川本は清水ジュニアユース3冠達成メンバーの中で唯一のトップ昇格という自負がある。鈴木は中体連チームから名門・市船10番に駆け上がった男だ。そして栗原は伸び悩みを経験しながらも、身体の使い方が格段に上達したことでプロ契約を勝ち取った。頼もしいメンタリティーを持ったルーキーカルテットに注目だ。
名古屋に次世代の守護神候補。
<名古屋グランパス>
GK三井大輝、DF石田凌太郎(ともに名古屋U-18)、DF吉田晃(九州国際大付属)
名古屋グランパスは高卒3人の加入となった。
菅原由勢が昨年途中でオランダへに渡り、金井貢史、櫛引一紀の放出、レンタル中だった新井一耀もそのままチームを離れたことで、厚みを増す意味でも補強ポイントはDFラインだった。そこでユースから石田、九州国際大付属から吉田と、将来性豊かなDFを獲得している。
石田はFWからサイドバックまで幅広くこなせる選手。縦への仕掛けの強度、トップスピードの中で判断を変えられる頭の回転の速さが売りで、メンタル的にもプロ向き。どこで起用しても能力は十分だが、SBでの成長も楽しみである。吉田は185cmの高さだけでなく、スピードで広範囲をカバーできるCBだ。全国的には無名だが、大化けする可能性を秘めており、課題のビルドアップ面を含めてじっくりと育てて欲しい逸材だ。
GKでは189cmの三井もユースから昇格を果たした。足元の技術に長け、ビルドアップに関わることができるこの世代屈指のGKである。ランゲラック(31歳)、武田洋平(32歳)、渋谷飛翔(25歳)といずれも世代が異なるため、次世代守護神としての期待を背負う。