“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J1高卒ルーキー診断と戦略・前編。
鹿島は「新黄金世代」の予感が?
posted2020/02/15 11:40
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Getty Images
前編は王者、横浜F・マリノスから。
<横浜F・マリノス>
DF池田航、MF松田詠太郎、FWブラウンノア賢信(すべて横浜FMユース)
アンジェ・ポステコグルー監督の下、ポジショナルプレーと5レーンを軸に攻撃サッカーを展開し、J1王者に輝いた横浜F・マリノス。3年目を迎えるポステコグルー体制において、そのサッカーを具現化できるタレントの補強は最重要事項だ。
その一方で指揮官の意図をプロのスピードの中で表現するには、それなりの時間が必要となる。さらに来季以降のU-21リーグ構想の兼ね合いもあり、高卒選手の獲得はユース昇格生の3人、うち2人はJ3に即レンタルという形に。大卒選手も最優先補強ポイントだったGKのオビ・パウエルオビンナ(流通経済大)のみとなった。
189cmのFWブラウンノアは文字通りの高さとバネが魅力。個での打開力は高いが、まだ荒削りな部分も多く、周囲との連動や前線からの守備をJ3・カマタマーレ讃岐で磨いてほしいところだ。MF松田は右サイドからスピードに乗ったドリブルを見せるアタッカー。彼もまたレンタル先のJ3・SC相模原で修行を積む。
唯一マリノスに残った左SB池田は攻撃色の強い選手。高いアップダウン能力はもちろん、どのタイミングでどのスペースに突くか、守備をしながら考えられる頭のいいプレーヤーである。マリノスのSBは運動量だけでなく、高い戦術理解力も求められるため、今後を考えての昇格は頷ける。
また先日、2021シーズン加入選手として興國高校から3選手の内定を早々に発表した。ユース昇格の3人とポジションはかぶっておらず、クラブとしては彼らがヤングマリノスを構築する存在になることを期待しているだろう。
バングーナガンデは層が薄い左SBで期待。
<FC東京>
GK野澤大志ブランドン、DFバングーナガンデ佳史扶、DF木村誠二(すべてFC東京 U-18)
MF紺野和也(法政大)ら即戦力となりえる大卒ルーキーに照準を絞った印象があるFC東京。ユースからも3人を昇格したことで高体連からの獲得はなかった。
優勝を狙う今季、補強ポイントとしてSBとボランチが挙げられた。右SBの日本代表・室屋成に海外移籍の噂が上がるが、柳貴博の復帰と即戦力の中村帆高(明治大)の加入でピースは埋まった。一方、左SBは両サイドでプレーできるオ・ジェソクがG大阪に復帰したことで小川諒也のみ。そこで期待されるのがバングーナガンデだ。
昨年、左SBとしてルヴァンカップに2試合出場し、J3のU-23でも13試合にスタメン出場している。左足の精度と対人の強さだけでなく、攻撃的なポジションもこなす器用さも見せており、首脳陣の評価も高い。
186cmの高さと正確なフィードを誇る木村は将来性抜群のCBだ。森重真人ら人材豊富のポジションだが、強化の年齢バランスを考えると10代のCBは必要不可欠だった。働き盛りである渡辺剛が五輪をきっかけに海外へ羽ばたく可能性もあり、木村に対する期待は大きいだろう。
2人とは学年が1つ下にあたるGK野澤大志ブランドンは、飛び級での昇格が決まった。世代別代表の常連である193cmの大型GKは、ハイボール処理とシュートストップを得意とする。守護神・林彰洋、同じユース育ちの波多野豪と共に切磋琢磨し、次世代を担う存在となってほしい。