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長友佑都は特異、では南野拓実は?
新顔の順応はクラブの腕の見せ所。
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2020/01/27 20:30
プレミアデビューを飾り、FA杯でも2試合に出場した南野拓実。ゴールには絡めていないが、クロップ監督は積極起用している。
ハーランド、イブラは早くも主力。
昨シーズンのファビーニョが好例だ。当初はリザーブリーグなどでイングランド・フットボールとのフィット感を確かめ、プレミアリーグの先発起用を10節のカーディフ戦まで待つ用意周到な配慮を見せている。今シーズンは負傷に苦しんでいるとはいえ、戦列を離れるまでリバプールのアンカーはファビーニョが第一選択肢だった。
郷に入っては郷に従え──は、受け入れ側の押し付けである。外交的な選手がいれば、内向的な者もいる。家でノンビリ過ごしたいタイプは、パーティーに誘われても楽しくない。選手個々の性格を踏まえた対応が必要だ。
いくつかの資料を紐解くと、「環境適応力が低くても、意識と行動で変えられる」という説もあるが、クラブや監督が押しつけがましいと、なにも変えられない。
この冬、ザルツブルクのアーリング・ハーランドはドルトムントに新天地を求め、デビュー戦でハットトリック、2戦目でも2ゴール。サポーターの期待に応えると同時に、ハードルも上がった。7年半ぶりのミラン復帰となったズラタン・イブラヒモビッチは、長年の経験が醸す威厳で前線に味付けをしている。
ベンフィカからトッテナムに移籍したジェジソン・フェルナンデスは「落ち着いていて、ポジショニング、ボールコントロールなどでもミスがない」と、ジョゼ・モウリーニョ監督のお墨付きを早くも得た。
即答を求められる「冬」の難しさ。
ただ、冬の移籍は失敗例も少なくない。昨シーズン、バルセロナからアーセナルにやって来たデニス・スアレスは、ブーイングすら浴びずに在籍6カ月を費やした。
夏よりも即答を求められるため、過去にはフィリペ・コウチーニョ(リバプール→バルセロナ)、アレクシス・サンチェス(アーセナル→マンチェスター・ユナイテッド)、本田圭佑(CSKAモスクワ→ミラン)といったビッグネームが期待を裏切っている。
トッテナムからインテルへの移籍がいよいよ濃厚になったクリスティアン・エリクセンのような実力者でさえも、成功は約束されていない。彼らは高度な環境適応力を有していたのか。受け入れ側は万全な態勢を敷いていたのか。監督は無理強いしなかったか。いくつもの疑問が湧いてくる。